ドゥワール・バー

Duwāl bā

地域・文化:アラビア


 シンドバッド物語の中に現われる「海の老人」の原型になった、または深い関連があると思われる怪物。ペルシア由来。
 13世紀のアル=カズウィーニー著『創造物の驚異』によれば、ドゥワール・バーの特徴はその脚にある。彼らの2本の足は人間と違って骨が通っておらず、薄くしなやかで、革紐のようである。そして這って歩き、旅人を見つけると背負うようにしつこくせがむ。そこで旅人がドゥワール・パーを背負うとこの怪物は革紐脚を首に巻きつける。旅人はそれを外し投げようとするが、ドゥワール・パーは指の爪で顔を引っかき、乗り物のままでいるよう強制する。
 『創造物の驚異』写本に付されたイラストでは、カズウィーニーが「非常に美しい容姿」と言うように、丸顔の若者の姿で描かれている。下半身は「革紐」の喩どおり先細りであるが、よく見てみると蛇の尾のようにも表現されている。事実、ある写本(ジャラーイル朝の宮廷で作成されたペルシア語写本)では、蛇のような細長い脚が、幾重にもわたって旅人の身体にから見ついている様子が描かれている。どちらにしても、体にはうろこが生えており、当時爬虫類的な存在として考えられていたことがうかがえる。

 脚がぐにゃぐにゃしているドゥワール・パーは、身体的特徴を遡るとプリニウスの『博物誌』のヒマントポデスにいきつく。また、脚が爬虫類になっている存在として、ヘシオドスの『神統記』にあるギガスたちも関係してくるのかもしれない。
 旅人を襲う物語については、下ると『アラビアン・ナイト』の「海の老人」、そしてサーデク・ヘダーヤトが20世紀初頭に著したペルシア民俗誌にある妖怪「革紐脚」などにも見える。

関連項目


参考資料 - 資料/96


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Last-modified: 2013-10-14 (月) 18:35:54