シェセル

Sheseru

地域・文化:古代エジプト


 「矢」(複数形)。
 悪霊の総称。
 古代エジプトでも、西アジアのほかの地域と変わらず、多くの悪霊たちが地上を徘徊していた。それらの悪霊たちはまた、メソポタミアのウトゥックたちと同様に、多くが主要な神々(たとえば、セクメトやバステト、ネクベト、トトエス)に属する存在であるといわれた。これらの悪霊には、カティウ、ハビウ、ウェプウェティウ、シェマイウといった名前で知られているものもいるが、それぞれ自分たちの特徴がそのまま名前になっているようである。たとえば、悪霊たちは人間や敵対者と「戦うもの」(カティウ)であり、神々の意思を伝える「使い」(ハビウ)、「使者」(ウェプウェティウ)である。しかしそれ以外のときは「さまようもの」(シェマイウ)であり、なんでもないのに人間を襲う。
 シェセルたちは、普通は西アジアの悪霊たちと同じで罪のある人を襲撃して罰する役目があったらしい。でも、単なる悪意から、道を横切った人を見つけては攻撃し、一見理由のないようにみえる病気を引き起こすこともあった。そのため、人々は呪文の書かれた魔術パピルスを小さくたたんで首飾りとしてかけ、悪霊たちの攻撃を避けようとした。また、医術文書上でも、患者を悪霊たちの影響から遠ざけて回復を期待するために呪文が使われた。
 メソポタミアと同様に(ウドゥグ、ウトゥック参照)、シェセルの集団も7体かその倍数で構成されることが多い(その場合は「7本の矢」と呼ばれる)。この7のシェセルはまた占星術上の7つのデカンと同義でもあり、このデカンとシェセルは同一視されていたらしい。シェセルのデカンが最高期にあれば、この悪霊たちの活動は最も活発になる。一年360日から余った年末の5日もまた悪霊たちが蔓延る期間であり、束縛から解き放たれ、誰も統率するものもいないシェセルたちはここぞとばかりに地の上を広がっていくのである。神殿の中では神官たちが悪霊たちを鎮めるために連祷をおこなったが、どこまで効果があったのかどうかは、わかりません。

関連項目


参考資料 - 資料/311:


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Last-modified: 2013-09-11 (水) 16:52:26