カトブレパス

Catoblepas

地域・文化:古代ギリシア・ローマ


 ギリシア語:カトブレプス(Katōbleps, Κατωβλεψ)など。

 プリニウスは次のように書いている。
 「エティオピア西部には、ナイル川の源流と信じられているニグリスという泉がある。……この近くにカトブレパスという獣が棲んでいる。中くらいの大きさで、ほとんど動かない。頭部が非常に重いため、移動するのに大変な苦労をともなうのである。いつも地面に突っ伏しているのだ。しかし、そうでもなければ人間にとって致命的であろう。なぜならカトブレパスの眼を見たものはあっという間に死んでしまうからである」(第8巻第77節, LCL pp.56-57)。彼は続けて「バシリスクという蛇にも同じ能力がある」と述べるが、ここでは省略する。
 また、ポンポニウス・メラの『地誌』には次のようにある。
 「カトブレパスは大型の野獣というわけではないが、その巨大で重い頭部を滅多に持ち上げることはない。そのため、顔を思い切り地面に近づけてあたりを動き回る。この動物はエティオピア人の住むところに産出するが、そのユニークな能力には特筆すべきものがある。それは、その眼で見たものは、たとえ物理的な攻撃をしなくても死んでしまうのである」(第3巻第98節、p. 128)。
 アエリアヌスは『動物の本性について』で次のように述べる。
 「リビュアは多種多様な野生動物の産地であり、さらに、この地はカトブレポンという動物を産出する。外見は牡牛ほどの大きさだが、より薄気味悪い。長いまつ毛が密に生えており、その下にある両眼は牡牛ほど大きくはなく、細目で充血しているのである。カトブレポンは眼差しを真っ直ぐではなく地面に向ける。そのため「カトブレポン=下を見る」と呼ばれるのだ。頭頂部あたりから生えているタテガミは馬のそれに似ていて、だらりと垂れて顔をおおいつくしている。そのため、遭遇したとき、より恐ろしさを感じることになる。毒性の根をかじる。カトブレポンが雄牛のように睨みつけるときは、ただちに身を震わせてタテガミが逆立つ。立ち上がって口を剥き出しにすると、喉から激烈で汚い気息を吐き出す。そのため周囲の空気全体が汚染され、近づいてその空気を吸った動物は、非常に苦しめられ、声を失い、死ぬほどのひきつけを起こす。カトブレポンは自分の能力を知っている。他の動物もこのことを知っているので、できるだけ速く遠くに逃げようとする(第7巻第5節、LCL 98-100)」。
 プリニウスらと違ってアエリアヌスはその毒性を邪眼ではなく吐息にあるとみている。いくぶん説明が「自然化」されているともいえる。

 中世にもカトブレパスは語られた。
 バルトロマエウス・アングリクス『事物の特質について』では随分と呼び方が変形して「カコテファス」(Cacothephas)という名前になっている。この動物はナイルの源流といわれるところの近くに棲んでいて、身体は大きくはなく、不器用で鈍重であり、その頭はずっしりと重い。そのためカコテファスはいつも頭を下に向けている。しかしこのことは人類にとって救いなのだ。なぜならその顔は非常に醜くて毒性に満ちているので、真正面から見てしまうと、なすすべもなくあっという間に死んでしまうからである。 Mediæval lore from Bartholomaeus Anglicus, 1907, pp. 90-91.

 アテナイオスが『食卓の賢人たち』で引用するところによると、ミュンドスのアレクサンドロスは、リビアの遊牧民がゴルゴンと呼ぶ動物は、ギリシア語でカトブレポン(Katōblepon, Κατωβλεπον)という動物のことだ、と述べているらしい。

関連項目


参考資料 -


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Last-modified: 2013-11-18 (月) 08:18:24