フィン

地域・文化:スウェーデン


 名前の巨人。スカンジナビアで最初の大僧正座になったスコーネのルンドの町には、素晴らしいローマ風の教会がある。しかし、この教会はいつまでも未完成のままだという。いつも、どこか欠けた所があるのだという。それは、この教会を建てたのが人間ではないからである。
 ラウレンスという人がキリスト教を布教するためにルンドに来たとき、彼はぜひともそこに素晴らしい教会を建立したいと考えた。しかし、彼にはどうやってそれを遂行すればいいか、さっぱりだった。そこに、ラウレンスの噂を聞きつけた巨人がやってきた。
 「もし、お前が、私が教会を建て終わるまでに私の名前を当てるなら、教会を今すぐにでも建ててあげよう。しかし、もし、もしもだ、お前が当てられなかったら、私は太陽と月か、またはお前の両目をもらう」
 ラウレンスは承諾したが、内心は心配だった。
 巨人の仕事は予想以上にはかどり、あっという間に教会ができていった。ラウレンスはますます不安になった。巨人の名前を知る手がかりは一向につかめないし、太陽と月をあげる権限なんて自分にはないから両目を渡さなければならない。ラウレンスは、しばらく心でも休めようと、郊外の丘に腰を下ろした。すると、その丘で子供が泣いていて、母親らしき声が歌って子供をあやしている声が聞こえてきた。
 「明日は父さんのフィンが帰ってきますよ、そしたらあんたは太陽と月か、ラウレンスの目玉で遊べるんだよ~」
 これが巨人の妻子であることに間違いはなかった。ラウレンスは飛びあがって喜び、町へと舞い戻った。
 さて、町では巨人フィンが教会の屋根の上に上り、最後の一石を教会に据えようとしているところだった。その瞬間、ラウレンスは叫んだ。
 「フィンよ、フィンよ、ちゃんと石をおけよ!」
 巨人は怒り狂い、最後の石を投げ捨て、どこかにいってしまった。だから、この教会にはいつでもどこかに欠陥が見つかるのだという。

関連項目


参考資料 -


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Last-modified: 2010-06-28 (月) 05:26:56