アスモデウス

Asmodeus
Ασμοδαυς

地域・文化:悪魔学


 アスモデウスはギリシア語で、ヘブライ語ではアシュモーダーイ。
 魔王の一人。悪霊の王、魔神の王、剣の王等と呼ばれている。
 その起源はゾロアスター教の聖典『アヴェスター』の「ガーサー」に現れる唯一の(固有名詞を持った)悪魔アエーシュマであるとされる。アエーシュマ説以外にもヘブライ語に語源を求める説があるが、一般的にはアエーシュマが起源であると考えられている*1。この同一視を最初に行なったのはエルネスト・ルナンの『イエス伝』(1863)らしい*2
 ただ、アエーシュマの本来の「酩酊」や「狂乱」といった性格まで現在にまで受け継がれているわけではないようだ。

 アスモデウスは、旧約聖書外典『トビト記』では、自分の気に入った娘に取り憑き、結婚初夜に新郎を絞め殺した悪魔だとされている。娘の名前はサラ。彼女の8人目の夫のトビアは旅人だった。しかし、彼には大天使ラファエルがついていた。不安を隠しきれないトビアに、ラファエルは「魚の心臓などを持っていけ」と助言した。
 結婚当日、トビアは寝室で魚の内蔵を焼いた。この煙にアスモデウスは蒸せかえり、遙かペルシアからエジプトまで逃げたのだが、結局はラファエルに捕らえられ、縛られてしまった。

 アスモデウスは、一般的なユダヤの伝承ではトゥバルカインの姉妹ナーマの息子だと考えられているが、時にダヴィデ王とアグラトの息子であるとされることもある。また、アザゼルの息子だともいわれている。『バビロニア・タルムード』の「ペサヒーム」篇110aなどでは、アスモデウスは悪魔の王とされている(ちなみに女王はアグラト・バト・マハラト)。
 彼は、手下に多くの魔神を持っている。その顔は炎のように燃えていて、天使の翼を持っていた。  また、『ゾハル』やハシデイ・アシュケナズ(Ḥasidei Ashkenaz)の言うところでは、アスモデウスはトーラー(旧約聖書の基本的なところ)を受け入れ、「ユダヤ教徒の悪魔」であるとされることもあった。アスモデウスはトーラーの勉強に熱心で、毎日天上に通っていたともいう。
 アシュメダイとファラオの綴りがゲマトリアの数秘術的に同一であることから、「ファラオという言葉がエジプトの王の部屋を意味するように、アシュメダイも単に悪魔の王の部屋の名前に過ぎない。すべての悪魔の王はアシュメダイと呼ばれる」という考えもあった。

 近世ヨーロッパの悪魔学においては、彼はレヴィアタンに次ぐ地位にあり、悪魔の王、復讐者の王と呼ばれた。破壊の魔神であり、遊技場の総監、放蕩や過ちを人間にさせるという。人間に星回りの指輪を与え、透明になる術を伝授し、幾何学や算術や天文学、工芸術を教授した。しかし、人間の力では呼び出すことは出来ないという。彼は、王の頭に羊の頭、雄牛の頭を持ち、虎の頭の竜に乗り、アヒルの足を持つ。炎のような息を吐く。

関連項目


参考資料 - 資料/7:; 資料/85:; 資料/126:


*1 資料/412: 193n27.
*2 Ibid.

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Last-modified: 2008-08-29 (金) 19:03:55