ここでは日本語情報に絞って書きます。

初心者向け 幻想動物を知るのに、他の歴史や文学のような分野と違ってオーソドックスに攻める道はありません。逆に歴史や文学、宗教などをオーソドックスに攻めていってから幻想動物を知ろうとするのが一番間違いの少ないルートになります。各国の歴史や文化や宗教などを知らずに幻想動物を知ろうなんていうのは、いわば砂上の楼閣でしかありません。 とはいえ私自身そのような道を通っていったわけではないので、あまり人のことは言えません。それに、粘り強く幻想動物を追っかけていけば自然とその手の知識はついてくるはずです。

では、これから、一冊で広い範囲を見渡せるようなもの&幻想動物事典系のものを紹介していきます。

幻想動物についてのネット上の情報は基本的に信用しないに尽きます。とくに「解釈」や「説明」のような価値判断がある場合は、90%の割合で間違っているか不正確か誤解を招く表現になっていると考えていいでしょう。原文をそのまま載せているようなウェブサイトや本の出版データなどについては手軽に見ることができるので活用したほうがいいでしょう。 Wikipedia(日本語版)も、ここ1,2年でギリシア・ローマ神話と北欧神話については詳しい記述が載るようになっていますが、情報の羅列である「辞典」の域を出ておらず学問の分野でどのような研究が行われてきたかまで掲載している「事典」に達する見込みはない。どの原典のどの箇所に記述されているのかを知るための「下調べ」程度に使うのがもっとも有効な活用方法でしょう。

とはいえ1990年代後半以降、日本だと21世紀に入ってからは、書籍媒体もネット上の情報も内容的にはそんなにかわりばえしないものになっています。これはおそらく、幻想動物についての書籍媒体を書いている人たちがネット上の情報を参考にしはじめたからと考えていいでしょう。それでも書籍媒体の勝る点を挙げておきます。1.イラストがついていることが多い。イラストと文で分業が成立しているので、専門のイラストレーターに幻想動物たちのイメージを任せることができるわけです。2.書籍なので手元においておけば「積ん読」効果が得られる。ウェブページや図書館から借りた本なんかは一時的にしか自分の目の前に存在しないので、忘れやすくなります。しかし自分の本棚に並べておけば、意識的にでも無意識的にでも背表紙が目に入ったり何気なく手にとってパラパラめくったりで、徐々に自分の中に情報が浸透していきます(これは多くの読書指南に書いてあることです)。だから本は可能なかぎり買っておくべきです。

私自身はここ10年くらいあまり初心者向けの本を買ったり読んだりしていないのですが、何気なく書店で手に取った中でよさそうなのといえばこれでしょうか。幻獣ドットコム(2008)『図説 幻獣辞典』。類似品の「よくわかる」シリーズとかの文庫本や別冊宝島とかのサイズ大きめ本とかは同じ内容が繰り返されているだけなのでいくつもそろえる必要はないと思います。内容に間違いがあるとしても、それはこの手の初心者本は書いている人も初心者なので仕方ないことですし(判断基準は以下参照)、これから紹介する本によって補完したり訂正したりすればいいでしょう。あとは造事務所、東ゆみこ(2007)『世界の「神獣・モンスター」がよくわかる本』は本職の神話学者が監修していますので悪くないと思います。

私が興味を持ったころは新紀元社のシリーズが出ていたころでした。『幻想世界の住人たち』1,2と3の中国編、4の日本編があります。1はAmazon.co.jpでは中古でしか手に入らないみたいです。また新紀元社事典シリーズの『幻想動物事典』『悪魔事典』も余裕があればそろえておきたいところです。 それで、初心者が書いたと分かる一つの判断基準として、これら新紀元社の本が「参考文献」に挙がっているというのがあります。そして十中八九、そういう本は新紀元社の本の足元にも及びません。だから私としては多少古くても新紀元社をおすすめします。

以上はゲームやファンタジーなどから幻想動物に興味を持った人向けのはじめの一冊的なブックガイドですが、文学やオカルト、妖怪から興味を持つ人もまれにいます。というか、昔はそういう本ばかりでした。 ホルヘ・ルイス・ボルヘス『幻獣辞典』。これは神話伝説だけではなく文学などに出てくる幻想動物も扱っている、この手の古典的な事典です。読み応えがありますし、絶対に一度は目を通しておくべきです。ただし中にはボルヘスが空想を膨らませたものもあるので注意。 妖怪系としては水木しげるの『世界妖怪事典』と『続世界妖怪事典』。妖怪ばかり書いているイメージのある水木しげるですが、以外にもグリフィンやゴルゴンのようなオーソドックスなモンスターも書いていたりするのです。『続』のほうは韓国や東南アジアの妖怪に詳しく、類書がありません。

もっと巨大な百科事典クラスの本としてはキャロル・ローズの『世界の神獣・怪物事典』と『世界の妖怪・精霊事典』があります。こちらも『よくわかる本』と同じく日本神話学の有名どころが日本語訳監修をしているはずなのですが、間違いが多いです。ただし日本語情報がない幻想動物が多く載っているので、とりあえず手元においておけば耳慣れない名前を聞いたときも「キャロル・ローズが元ネタなんだな」とわかると思います。ちなみに私は日本語訳が出る前に英語原書を買っていたので日本語版は持ってません。高価ですので金に余裕があるかよほどの本のコレクターでもないかぎり図書館通いで十分だと思います。

次に地域別


トップ   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS