ファラク

地域・文化:アラビア


 この世界の全てを支えている巨大な蛇。

 『千夜一夜物語』第496~497夜は「くちなわの女王」の枠物語「ブルーキーヤーの話」の一部である。ブルーキーヤーはムハンマドを慕って世界中を放浪し、くちなわの女王に会い、スレイマンの玉座に近づき、そして今、世界をとりまくカーフ山を支配する天使に出会った。天使は、イスラムの世界観をブルーキーヤーに語る。
 まず、この世界はこの天使の管轄下である。地震も日照も豊作も戦争も平和も、すべて命令に従ってこの天使が引き起こすものである。カーフ山には、今いる大地のほかに白銀のような真っ白な大地が囲まれている。また、カーフ山から500年の距離には氷と雪に閉ざされた山脈があり、地獄の第一層であるジャハンナムからの熱を和らげている。さらに、カーフ山のかなたには40を超える大陸があり、そのどれも我々の世界の40倍の大きさを持っている。この世界の天使たちはアダムも知らなければハワーァ(エヴァ)も知らず、昼も夜も知らない。ただアッラーをたたえるのみである。
 すべての大地は七重になっている。そしてその大地を、アッラーが創造した一位の天使が首の後ろのところに背負っている。その下には巨大な岩がある。そしてその下には雄牛がいる。../クユータのことであるが、ここに名前は載っていない。その下には巨大な魚。../バハムートのことであるが、ここでも名前は載っていない。そして、巨魚が泳ぐ海がその下にある。アッラーはこの巨魚を1日に40匹も創造しているという。
 その下には「虚空」。そしてその更に下には地獄が存在する。そして、その更に更に下に、ようやくファラクという大蛇が創造されたのである。
 アッラーがファラクを創造したとき、この神は蛇に、大事なものを保存するのだから心せよ、と啓示した。ファラクが従うことを約束すると、アッラーは口を開けたファラクの中にジャハンナム(地獄)を入れた。ジャハンナムはこうして審判の日までファラクの口の中にあるのである。復活の日になるとジャハンナムはファラクの口から出されて(?)審判の広場に鎖で繋ぎとめられるらしい。
 ファラクは極めて巨大なため、もしアッラーを畏れているのでなければ、アッラーの創造した第一位の天使を含んだ世界全体を飲み込んでしまうだろう、といわれる。

 そのようなわけで、ファラクは地下世界と地獄の守護獣ともなっている*1

関連項目


参考資料 - 資料/199:


*1 資料/566:214.

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