*ケレメト [#dc1e7aee]
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地域・文化:マリ

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 クグザ(Kuguza: 老人)、クグ・イェン(Kugǝ jeη: 偉大な人)、クグラク(Kugǝrak: 王子)、ボドジュ。~
 強大な力を持つ悪霊のこと。~
 ユム(神)の永遠の敵対者であり、また、兄弟であるともされる。両者は常に戦っているという。~
 人々は自分からケレメトについて話そうとはせず、とくに外部からの人間に対しては決して語ろうとしない。基本的にはケレメトは人間に災厄や病気をもたらす存在であるが、極まれに人間に富を与えたとか漁師に幸運を与えたとかいった話も報告されている。

 精霊であるケレメトは、もともとは人間だった。ある伝説によれば、伝説的な英雄が死後ケレメトになったという。しかし、多くの場合はケレメトは生前悪事を働いていた人間が、その悪意を死後もケレメトとして存続させているものだと考えられた。また、ケレメトは靭皮を樹に巻いてそこに生贄を捧げることによって作り出す事ができるといい、また、唾からもケレメトが生まれるという。別の伝説によれば、ケレメトはタタール人であったともいう。~
 ケレメトは悪霊ではあるが、神々と同じように生贄を捧げられ崇拝され、その悪意をなだめるような祭儀が行われていた。神々への生贄とケレメトへの生贄の違いは、前者が「上向」で後者が「下向」であることだと説明されている。定期的な生贄は大勢の人々によって年次的に行われる。そして、この公的な生贄は司祭によって執行される。このとき生贄として最も適切なのは馬であるが、その他の動物も生贄として捧げられるという。個人的な生贄は、ケレメトがその人に対して起こした病気を治癒するために行われる。こちらのほうの祭儀は、祭儀についての知識がある人間やその関係者が行うことも可能である。ケレメトたちは神々と同じ木立の中では崇拝されないが、同じ名前のケレメトという木立を所有している。~
 ケレメトの中には、不特定多数の人々によって崇拝されているものもあれば家族単位で崇拝されているものもあり、後者はシュケ・ケレメト(Ške Keremet: 独自のケレメト)、シュケナム・オンチュム・ケレメト(Škenam ončǝmǝ Keremet: 我々を大切に扱うケレメト)と呼ばれる。このケレメトがいる家族は、ほかの家族のケレメトに生贄を捧げることはない。しかし、複数の家族に関係がある人はその家族の分だけ生贄を捧げることになる。~
 呪術師は、呪いをかけたいと思う人の衣服の一部や髪の毛の一房をケレメトの木の下に置くことにより、病気を起こさせ、そして死に至らしめることができる。
**関連項目 [#v4a389e1]
-[[../ボドジュ]]

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参考資料 - [[資料/338]]:


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