オピオン

Opīōn
Ὀπίων

地域・文化:古代ギリシア


 オピーオーン。
 またはオピオネウス。
 古代ギリシアの神話に登場する巨人。オルペウス教と関連があるとも言われるが、はっきりしない。
 ロドスのアポロニオスはオルペウスがアルゴー船上で歌ったものとして一種の創造神話を披瀝している。ただしこれはオルペウスの名前だけが使われているのであって、内容的にはオルペウス教の宇宙創成論とは何の関係もない寄せ集めであり、単なる文体練習のようなものだと考えられている。このなかには「蛇」(オピスοφις)の名前を冠するオピオンという神(?巨人?)の物語が語られている。オピオン(またはオピオネウス)は蛇の化身らしい。
 原初のとき、大地と天と海は一つの形で混ざり合っていた。しかしそれは「恐ろしい争い」によって分離された。それから星々、月と太陽が、山々が、河川が、生き物が誕生していった。この太古の世界において、最初にオリュンポス山を支配したのはオピオンとオケアノスの娘であるエウリュノメだった。しかし後にオピオンはクロノスに、エウリュノメはレイアに支配権を明け渡した。後にゼウスたちがこれらから支配権を奪うことになる。(『アルゴナウティカ』第1歌495~510行)

 同じような名前のオピオネウスという神の物語は、シュロスのペレキュデス(前6世紀ごろ)によっても語られている(『神性論』)。ただしペレキュデスの著作は現存せず、オリゲネスの『ケルソス論駁』などに引用されている神話からそのおおまかな内容がわかっているに過ぎない。これがオルペウス教と関係するかどうかはわからないが、実際のところはあまり関係ないようである。
 原初のとき存在していたのはザス(Ζας/Zas=ゼウス。火や天を意味する)、クロノス(Χρονος、またはΚρονος。どちらも「時」の神)、クトニア(Χθονια「大地」)であり、これは常にある3つの最初の原理だった(ダマスキオス『第一の原理について』124b、プロブス『ウェルギリウス「牧歌」注解』6.31、ヘルメイアス『異教哲学者を諷す』12など)。またゼン(Ζην/Zēn=ゼウス)とクトニエ(=クトニア)とエロスがあり、さらにオピオネウスが誕生したと言っていた、とする人もいる(テュロスのマクシモス『哲学談義』VI.4.*8)。
 二軍が対峙した。片方を統率するのはクロノスであり、もう片方を統率するのはオピオネウスであった。彼らは、どちらがオゲノス(=オケアノス)に倒れ落ちようとも、落ちたほうが敗者であり、押し出したほうが勝者にして天を占有することができる、という取り決めをおこなった(オリゲネス『ケルソス論駁』VI 42)。結末は書かれていないが、おそらくオピオネウスたちは敗れて大洋に落ち、天上の支配権をクロノスたちに譲ったのだろう。

 また、ペレキュデスはフェニキア人に刺激され、オピオネウスやその子どもたち(オピオニダイ)の物語を作ったらしい(エウセビオス『福音の準備』I.10.50によるビュブロスのフィロンの引用)。

関連項目


参考資料 - 資料/6:36-37; 資料/7:91-92; 資料/8:58-59; 資料/375:88


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