地域・文化:アイルランド
['foμor'e]。
フォウォレ。
語源的には「海」、またドイツ語のマーアMahr「幽霊、幻」と同語源のケルト語というものがある。
アイルランドの「神話物語群」に登場する、アイルランドの先住民族。怪物的な種族である。おもに『アイルランド来寇の書』と『マグ・トゥレド第二の戦い』に登場する。
『アイルランド来寇の書』によれば、大洪水がおきてから300年後にこの地にパルソローンの一族がやってきたとき、すでにフォモールたちが存在していた。そこで初めての衝突が起こった。続いてやってきたネメズの一族はフォモールに朝貢しなければならなかった。
今の人々のひとつ前の種族であるトゥアハ・デー・ダナンがやってきて、2度にわたる戦争でようやくフォモール族を撃退することに成功した。この戦争はマグ・トゥレドの戦いと呼ばれている。
インド・ヨーロッパ語族の三機能論によれば、フォモールは生産や豊穣をつかさどる第三機能を保持しているとされる。トゥアハ・デー・ダナーンには主権神と戦闘神、そして技芸神しかおらず、豊穣の神は存在していなかった。そのため、フォモール族の持つ豊穣の機能を吸収することが必要だったのである。フォモールとトゥアサ・デー・ダナーンとの一連の戦争神話は、北欧やローマ、ギリシア、インドに対応する事例があるという。
マン島ではフォウル(Foawr)。