地域・文化:ヒッタイト
新ヒッタイト語時代の儀礼文書に現れる神魔の名称。恐ろしい神、あるいは精霊であるとされる。
ヒッタイト王国のそばにあったミタンニの宗教がインド-イランの系統にあったと推定されることから、この「アクニ」なる超自然的存在もインドの火の神アグニ(Agní)の借用ではないか、とする説がある。たとえばヨハン・ティシュラーはアクニを明確に「儀礼における火の神」としており、たぶんインド-イランからの借用であろうと考えているが(資料/455:10], 1977)、アネリエス・カメンフーバーは「古代インドのアグニとは無関係」と切って捨てている(資料/454:53, 1975)。ジュリア・トッリは「小さき種がひき臼から逃れ出るように、依頼者をアクニの口から逃げ出させよ」という呪文を紹介していて、Agniと翻訳している(資料/456:220-21, 2003)。
どちらにせよアクニに関する詳細な神話資料が乏しいため断言は難しいようである(ただし上の呪文から推測するに「例外なく無慈悲で恐ろしい存在」であることは間違いなさそう)。