アルー

Alû

地域・文化:アッカド


 ルー(Lû)、エルー(Elû)。
 原義は不詳。
 シュメール語におけるグドアンナ、グアンナ。
 人面で、翼が生えていたり生えていなかったりする、「天の牛」。よく形態が似ているシェードゥとは区別されている。『ギルガメシュ叙事詩』に登場する。

 いろいろあって(フンババの項目参照)ウルクに凱旋したギルガメシュとエンキドゥ。その勇姿を見て一目ぼれしたのが性愛の女神イシュタルである。イシュタルはギルガメシュに対し様々な褒賞を用意し、情熱的な求愛をした。しかしギルガメシュはイシュタルがこれまでに何人もの(何百人もの?)男性を誘惑してはひどい目に合わせたことを語り、そんなイシュタルの求愛を受け入れることはできない、とこれをつっぱねた。
 プライドをズタズタにされた女神イシュタルは父アヌに泣きつき、「天の牛」アルーをギルガメシュを殺すために作ってくれ(または「与えてくれ」)、と頼んだ。さもなければ冥界の門を解き放ち、死者を地上に戻して生者を食べさせてしまう、という。アヌは天牛アルーを地上に送ると7年の不作がやってくるからそんなことはできないと諭したが、イシュタルはそれ相応の食料は備えているとあらがった。以下粘土板の欠損が激しいが、結局アヌはアルーを地上に送り込んだらしい。
 そしてまたしばらく粘土板は欠損しているが、この間にアルーは地上に大きな犠牲をもたらしたようである。ついに2人の英雄は立ち上がり、エンキドゥはその角をつかみ、アルーの動きを止めた。「今だ、殺せ」ギルガメシュは剣をアルーの首に突き刺し、そしてこの怪物を退治することに成功した。
 ギルガメシュはこの牛の心臓をシャマシュに捧げた。イシュタルはウルクの城壁に上りギルガメシュに呪いの言葉を吐いたが、エンキドゥはアルーの太ももを引き裂いて、なんとイシュタルの顔に投げつけた。「もしお前をつかまえさえすれば、あれにしたようにお前にもしたいところだ」。
 この牛の角は青玉石で出来ていて、非常に厚く、職人たちはそれから何かを作ったらしい。
 数多くの活躍により地上では大いに歓迎されていたギルガメシュとエンキドゥ。しかし天界の掟では、エンリルの創造物たる森の番人フンババを殺し、天神アヌが作ったアルーを殺したこの2人のうち、どちらかが死ななければならないことになっていた。そして神々はエンキドゥの死を選ぶ。ギルガメシュは最愛の親友の死を悲しみ、永遠の命を求めて彷徨うことになるのであった。以下ギルタブルルーの項目参照。

関連項目


参考資料 - 資料/225:; 資料/2, s.v.; 資料/350; 資料/351:


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