ティアマトの11の怪物

Tiamat's Creaturs

地域・文化:アッカド


 バビロニア語:ウームー、ウマーマーヌ、ガルル、シュート・メー・ナーリ・ウ・ナーバーリ、ビーヌート・アプシなど。
 バビロニアの叙事詩『エヌマ・エリシュ』において、ティアマトがうるさい子供たちを静めるために生み出した11の怪物は以下の通り。マルドゥク(アッシリア版ではアッシュル)がすべて打ち倒し、記念にその図像がアプスーに安置された。とある新アッシリア時代の祓魔文書によれば、これらの怪物の人形は魔除けとして使われていたらしい。
 日本語表記がいくつかあるようなので全部並べてみました。その下はアルファベット転写表記、原語の意味、試し読みです。
<ol><li>7つの頭のドラゴン ムシュマッヘー 七頭の大蛇
Mušmaḫḫu 「七頭の蛇」 ムシュマッフ
<li>ドラゴン 狂暴な竜たち 竜
Ušumgallu 「ドラゴン」 ウシュムガルル
<li>毒蛇 バシュム
Bašmu 「毒蛇」 バシュム
<li>ムシュフシュ
Mušḫuššu 「怒れる蛇」 ムシュフシュ
<li>ラハブ ラハム
Laḫmu 「巻き毛の男」 ラフム
<li>ライオン 巨大なライオン 大きなライオン
Ugallu 「大きな日」 ウガルル
<li>狂犬
Uridimmu 「狂ったライオン」 ウリディンム
<li>サソリ人間 ギルタブリル サソリ人
Girtablullû 「サソリ人間」 ギルタブルル
<li>嵐の魔物 激しく押しよせる嵐 嵐の怪物
Ūmū dabrūtu 「嵐の風の獣」 ウームー・ダブルートゥ
<li>魚人間 クリール 魚人
Kulullû 「魚人間」 クルッル
<li> 翼のある牡牛 不思議な野牛 有翼の牡牛
Kuusarikku 「野牛」 クサリック
</ol>
 これらの怪物の一部はより古いニンギルスやニヌルタによって倒された11の敵対者から採られている。

 なお、(ティアマトの怪物に限らないが)メソポタミアの怪物と神々のの関係について、ヴェッヒェマン(F.A.M. Wiggermann)は以下のような整理をしている。
<table border><tr><td>怪物<td>神
<tr><td>合成獣<td>人間型
<tr><td>超自然的奇形<td>標準的な形質
<tr><td>自然現象の象徴<td>その現象が属するもの全ての象徴
<tr><td>人々の問題に干渉する<td>背後から持続して提供する
<tr><td>気まぐれな関係<td>主人
<tr><td>反逆、有害<td>正義の支配者
<tr><td>倒される敵<td>勝者
<tr><td>遠くの地の象徴<td>低地の象徴
<tr><td>山・敵の象徴<td>低地の規範の象徴
<tr><td>海の象徴<td>陸地の象徴
<tr><td>限定された宇宙的な役割<td>宇宙起源に責任を持つ
</table>
 これらの怪物はもちろん人間ではないが、神々のリストにその名が載ることもなく、人々を苦しめる悪霊のリストに名前が載ることもなかった。また、人間とは異なり不死であるともされた。

関連項目


参考資料 - 資料/350:; 資料/271:


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