*ベヘモト [#n29f9d23]
CENTER:&size(25){Bǝhēmôṯ, Behemoth &br;בְּהֵמוֹת};

地域・文化:ユダヤ教、悪魔学

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 旧約聖書に登場する「巨大な獣」。河馬とか水牛とか象とかいわれる怪物。~
 推定されている聖書時代のヘブライ語に発音を近づけると、ベヘーモースになる。~
 ベヘモトという名前は、ヘブライ語で「獣」を意味するベヘーマー(bǝhēmāh)に女性名詞の複数形接尾辞-ôṯをつけた単語である。これがそのまま合成された単語ベヘーマーホースにならないのは、語尾が-āhの場合はそれを除いて-ôṯをつける、という規則があるから。つまり、ベヘモトは「獣たち」(英語だとbeasts)という意味になる。一頭しかいないのに複数形であるのは、ベヘモトがあまりに巨大なためであるから、とされている。ベヘーマーはそれ自体が集合名詞として扱われており、複数扱いされることもある。

 アラビアの宇宙論では[[バハムート>イスラーム、アラビア/バハムート]]、[[バフムート>イスラーム、アラビア/バフムート]]、[[バルフート>イスラーム、アラビア/バルフート]]などと呼ばれ、大地を支える超巨大な魚とされている。
**聖書におけるベヘモト [#qb8a14eb]
 ベヘモトは特に神に敵対する悪魔というわけではない。「ヨブ記」の最後のほうでヨブの前に現れた神は、延々とこの怪物のこと褒める。それによれば、ベヘモトの骨は金属のように硬く、尾は杉とおなじくらい太く、川の水をすべて飲み干すことができるという。このとき同時に[[../レヴィアタン]]も言及されている。
 旧約聖書においては、ベヘモトは(レヴィアタンとは異なり)『ヨブ記』にしか出てこない。『ヨブ記』の最後のほうでヨブの前に現れた神は、延々とこの怪物のこと褒める。それによれば、ベヘモトの骨は金属のように硬く、尾は杉とおなじくらい太く、川の水をすべて飲み干すことができるという。このとき同時に[[../レヴィアタン]]も言及されている。~
 『ヨブ記』以前や同時代の文献には、(これまたレヴィアタンとは異なり)ベヘモトに相当する名称は見当たらない。

**聖書以降 [#z4fd1962]
 しばらく後の『エチオピア語エノク書』60:7-9(マカバイ戦争前[前167以前])では、終末の日に、大洋に棲む雌の怪物レヴィアタンと、雄の怪物ベヘモトが切り分けられる、と述べられている。それまではベヘモトはエデンの東にあるドゥンダイン(Dundayin)という目に見えない砂漠にその体を横たえているという(([[資料/410]]:40-41.))。また『シリア語バルク黙示録』29:4(後100年ごろ)でも、その時に(神が第五日目に創造した)ベヘモトとレヴィアタンが現われ、生き残った人々のための食料に供される、と書かれている(([[資料/411]]:630.))。また『第四エズラ記』6:49-52(後100年ごろ)にもベヘモトとレヴィアタンが第五日目に創造されたとある。二頭の巨獣はあまりに巨大だったので水が集まっている第七の部分(海)に置いておけず、別々の場所に移された。そして神はレヴィアタンには第七の部分である水の地を割り当て、ベヘモトには、第三の日に乾燥した土地の一部を与え、この千の山のある地に棲むようにした。また神は、望んだときに、望んだ人々に巨獣を食べられるように置いておいた(([[資料/966]]:536.))。
 しばらく後の『エチオピア語エノク書』60:7-9(マカバイ戦争前[前167以前])では、終末の日に、大洋に棲む雌の怪物レヴィアタンと、雄の怪物ベヘモトが切り分けられる、と述べられている。それまではベヘモトはエデンの東にあるドゥンダイン(Dundayin)という目に見えない砂漠にその体を横たえているという(([[資料/410]]:40-41.))。また『シリア語バルク黙示録』29:4(後100年ごろ)でも、その時に(神が第五日目に創造した)ベヘモトとレヴィアタンが現われ、生き残った人々のための食料に供される、と書かれている(([[資料/411]]:630.))。また『エズラ記(ラテン語)』6:49-52(後100年ごろ)にもベヘモトとレヴィアタンが第五日目に創造されたとある。新共同訳から該当文を引用する。「それからあなたは、二つの生き物をえり分けられ、その一つをベヘモット、もう一つをレビヤタンと名付けられました。そしてあなたは、両者を互いに引き離されました。水が集まっている第七の部分に両者を置くことができなかったからです。そしてベヘモットには三日目に乾いた土地の一部を与え、そこに住むようにされました。そこは一千の山のある土地でした。レビヤタンには水のある第七の部分をお与えになりました。あなたはこの二つを保存し、あなたのお望みのとき、お望みの人々に食べさせるようにされました」((Cf. [[資料/966]]:536.))。

**中世 [#r70c2849]
 トマス・アクィナスは、『ヨブ記注解』第40章において、ベヘモトは象であり、レヴィアタンは鯨である、と考えていたらしい。
**近世以降 [#qebef9db]
 おそらくアクィナスなどの論を引き継いで、欽定訳聖書(1611}の『ヨブ記』第40章第15節につけられた脚注では「(ベヘモトは)または、一部の人々が考えるような、象」とされている((http://www.kingjamesbibleonline.org/Iob_40_1611/))。欽定訳は今でも使われるので、少なくとも英語圏での影響力は大きかっただろう。~
 だが、1663年にロンドンで出版されたサミュエル・ボシャールの『聖動物誌』第5巻第15章ではあっさり「象ではなく、カバのことである」とされ、その後に長々と詳細・論拠が述べられている。さらに1667年のジョン・ミルトン『失楽園』では、ベヘモト(英語読みだとビヒーモス)は神話的な巨獣とされている。

**中世以降 [#qebef9db]
 中世ヨーロッパでは、ベヘモトは闇を司るものとされ、腹の突き出た直立した象のような姿をしている。欽定訳聖書の脚註では、「一部のものが考えるような象である」とされている。ジャン・ボダンは、これこそファラオだと考え、ド・ランクルは正体不明の巨大生物だという。また、彼によれば犬や狐、象、狼などに化けることが出来るという。ウィリアム・ブレイクは、ベヘモットを無意識の怪物だと考えた。
 このように動物の一種であると解釈されることが多くなる一方で、ベヘモトが悪魔の一種とされることもあった。ジャン・ボダンは、これこそファラオだと考え、ド・ランクルは正体不明の巨大生物だという。また、彼によれば犬や狐、象、狼などに化けることができるという。19世紀フランスのコラン・ド・プランシー『地獄の辞典』では、二本足で立つ腹の出た象のような姿で描かれている。詩人のウィリアム・ブレイクは、ベヘモットを無意識の怪物だと考えた。


**関連項目 [#wcf79e1b]
-[[イスラーム、アラビア/バハムート]]、[[../レヴィアタン]]、[[ユダヤ教/ジズ]]

-[[キーワード/象]]
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参考資料 - [[資料/356]]; [[資料/85]]:; [[資料/181]]:; [[資料/125]]:


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