*天狗 [#j8158652]
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地域・文化:日本・全国

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 別名: 今の人(石川)、クインサン(奈良)、狗賓(ぐひん、愛知、岡山、香川)など。

(1) 山の妖怪。~
 「テング」としての最初期の文献は『宇津保物語』俊蔭(970-990ca)「かくはるかなる山に、誰れかものの音調べて遊びゐたらん。天ぐのするにこそあらめ」と『源氏物語』夢浮橋(1001-1014ca)「事の心をし量り思たまふるにてんくこだまなどやうの物のあさむき率てたてまつりける」。のように、山の精霊としての意味合いが強かった。~
 『色葉字類抄』(1177-81)には「天狐 テンク」とある。~
 天狗道という言葉は『古事談』三・担応為染殿后退天狗事(1212-15ca)が初出。

 「天狗になる」という意味での天狗の文献初出は18世紀後半。

 天狗には固有名もいくつかあるようで、知切光歳が『天狗の研究』でまとめているところによると、その歴史は愛宕山太郎坊が『源平盛衰記』(鎌倉初期)の住吉神託宣に出ているのが最初。『太平記』にも愛宕山の天狗集会の長老として登場。それ以外には固有名はない。しかし、すでに大峰前鬼、後鬼の名前はあった模様。彦山豊前坊、葛城山高天坊などはあったかもしれない。~
 世阿弥や同時代の謡曲作曲者たちによる『鞍馬天狗』『花月』『松山天狗』などに天狗の名前、山が出てくる。~
 『鞍馬天狗』には鞍馬山僧正坊、彦山豊前坊、白峯相模坊、大山伯耆坊、飯綱三郎、富士太郎、大峰前鬼、葛城山高天坊、比良(次郎坊)、横川(よかわ。覚海坊)、如意ヶ嶽(薬師坊)、高雄(内供奉)、愛宕山(太郎坊)がある。~
 『花月』には彦の山(豊前坊)、白峯(相模坊)、大山(伯耆坊)、鬼ヶ城(如意?)、愛宕の山の太郎坊、比良の峯の次郎坊、比叡の大嶽(法性坊)、横川(覚海坊)、葛城(高天坊)、高間の山(高雄?)、山上大峯(前鬼)、釈迦ヶ嶽(金平六)、富士(太郎)。~
 『御伽草子』の「天狗の内裏」には、愛宕山太郎坊、比良山次郎坊、高野山三郎坊、那智山四郎坊、かんのくらの豊前坊、大唐のほうこう坊、天竺の日輪坊。フィクションっぽいらしい。~
 江戸の『役行者御伝記』という談義本には、行者が山と山の間に橋をかけようとして全国の天狗を呼び集めさせるところで、~
鞍馬山僧正坊、愛宕山太郎坊、比良山次郎坊、飯綱三郎、~
(新出)富士太郎、上野妙義坊、厳島三鬼神、常陸筑波法印、~
彦山豊前坊、大山伯耆坊、比叡山法性坊、~
(新出)肥後阿闍梨、高雄内供奉、~
白峯相模坊、~
(新出)秋葉山三尺坊、高野山高林坊、堺ノ浦太郎坊、大峯金平六、~
葛城山高間坊、大峯前鬼、~
(新出)大峯後鬼。~
とある。

 江戸中期の『天狗経』にはさらにたくさん天狗の固有名がある。鉛が多く、意味の取りにくい山や天狗があり、当て字も少なくない。同系統の『四十八ヶ山大権現』はもうどこかわからない山だらけらしい。

(2) キリスト教の悪魔。『ぎやどぺかどる』下・二・四(1599)に「天狗の謀略、あにまを出入し様々に変ずる事を弁へ、万の望みを本とせず、表むき善なりと見ゆる事に、早く同心せざる事も此善也」とある。
**関連項目 [#v2fae296]
-[[../ぐひん]]、[[../鞍馬山魔王大僧正]]、[[../天狗隠し]]、[[../天狗倒し]]、[[../天狗憑き]]、[[../天狗礫]]、[[../天狗囃子]]、[[../八大天狗]]、[[../山天狗]]、[[../川天狗]]

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参考資料 - [[資料/139]]:; [[資料/222]]:



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