バル・エッガーラー

Bar ʾEggārâ

地域・文化:シリア


 「屋根の息子」という意味。
 癲癇を引き起こす悪霊の一種。新約聖書のシリア語訳(ペシッタ訳)「マタイによる福音書」の第17章第14~18節に見える。この部分のギリシア語原文からの日本語訳(新共同訳)は以下のとおり。

一同が群衆のところへ行くと、ある人がイエスに近寄り、ひざまずいて、言った。
「主よ、息子を憐れんでください。てんかんでひどく苦しんでいます。度々火の中や水の中に倒れるのです。お弟子たちのところに連れて来ましたが、治すことができませんでした。」 
イエスはお答えになった。
「なんと信仰のない、よこしまな時代なのか。いつまでわたしはあなたがたと共にいられようか。いつまで、あなたがたに我慢しなければならないのか。その子をここに、わたしのところに連れて来なさい。」
そして、イエスがお叱りになると、悪霊は出て行き、そのとき子供はいやされた。 

 この「てんかん」の部分が、シリア語ではバル・エッガーラーと翻訳されたのである。メソポタミア文明以来、西アジアでは、癲癇は悪霊が引き起こすものともされており、その悪霊は、シュメール語では「屋根の主」と呼ばれていた。この伝統が紀元後のシリアにまで引き継がれ、この名称が翻訳に用いられたらしい。
 シナイ版シリア語訳聖書では、この部分は別の名称「ルーフ・ペルガ」になっている。

関連項目


参考資料 - [[資料/]]


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