アスコパルド

Ascopard

地域・文化:イングランド


 アスカパード。日本語表記は酒見研究室に準ずる。
 中期英語の武勲詩『ハンプトンのビーヴェス卿』にあらわれる巨人。

~これまでのあらすじ~

 7歳のころ、母親によって父の国王ガイを殺されイスラム教徒の地に売り飛ばされたビーヴェスは、いろいろ散々な目にあってモンブランのイヴォール王のところに恋人のジョシアンがいることを知り、巡礼者に変装してイヴォールを騙し、仲間のボニファスとジョシアン、愛馬アルンデルとともに城を抜け出した。しかし魔術を使うイヴォールの家臣ガルシアが彼らを追撃し、そしてアスコパルドを送り込んだのである。そのころビーヴェス一行はライオンに襲われ、ボニファスは殺され、ビーヴェス本人もほとんど殺されそうになったが、何とか名剣モルゲライでこの二頭の猛獣を斬り殺した。

アスコパルド

 そこに現れたのがアスコパルドである。彼はものすごくたくましく、身長は30フィートというから9mほどもあった。剛毛のあごひげを生やし、眉間は1フィートというから30cm、持っていた棍棒は小さな樫の木だった(~l.2336)。アスコパルドがいうには自分は王妃(ジョシアン)を連れ戻し、ビーヴェスを殺すのが使命である。もともと住んでいた町では自分は小さく繊細すぎたので追放されてしまった。しかし今ではこのように大きく強くなっている。
 ビーヴェスはアルンデルに跨り、槍をアスコパルドの肩に突き刺した。しかし槍はまったく役立たず、しかもこの巨人に一撃を加えられてしまった。そのとき彼も馬から落ち、そこに同じく馬から下りたビーヴェスが剣で切りかかろうとした。しかしなぜかジョシアンがビーヴェスを止め、アスコパルドを家臣にするようにと進言した。
 その後3人は海までいき、サラセン人たちの船を奪い取って(アスコパルドはアルンデルを腕に抱えて運び込んだ)ケルンの港にまで向かった。そこの司教は実はビーヴェスの叔父であるサベール・フロレンスであった。感動の再開。その後ビーヴェスは火を噴く竜(戦争好きの王が転生したもの。身長は体が24フィートで尾が16フィート)退治にアスコパルドを引き連れていった。二人を見た竜は雷のような大声を上た。それに怖気づいたアスコパルドは「どんなことがあっても、竜など見たくも聞きたくもない」といってビーヴェスだけ先に行かせた。ビーヴェスは竜と死闘の末勝利した。
 さてビーヴェスは自分の本来の領地であるイングランドに遠征に行き、その間にミール伯爵がジョシアンにしきりに言い寄り始めた。しかしジョシアンにはアスコパルドがついていたので、なかなかミール伯爵は思いを遂げることができなかった。そこで彼はアスコパルドに偽の手紙を渡し、ビーヴェスがとある島の城に急いで来て欲しいと頼んでいる、と言った。アスコパルドがその島に行って門を開けると、城のものがアスコパルドに槍を投げつけた。アスコパルドは塔の中に幽閉された。
 かくしてジョシアンを手に入れたミール伯爵だが、初夜当日にジョシアンに絞殺されてしまった。そこでジョシアンは火刑に処されることになった。これを塔の中から見ていたアスコパルドは塔を破壊し、漁師の船を徴発して漕ぎつづけ、上陸した。するとそこにビーヴェスもやってきた。ビーヴェスはアスコパルドが裏切ったものと思ったがすぐに誤解は解け、二人であっという間に本当の裏切り者たちを惨殺し、そしてジョシアンを救出した。
 ビーヴェスの父を殺した張本人にして現在ビーヴェスの母と結婚しその領地を支配しているアルメニア王は、ビーヴェスの母の親であるスコットランド王に加勢してもらい、サベールとビーヴェス、そしてアスコパルドがいる軍勢との対決に備えた。戦いが始まった。ビーヴェスはあと少しでアルメニア王デヴーンを殺すところだったがデヴーンの援軍にそれをさえぎられてしまった。アスコパルドはまずスコットランド王を馬ごと打ち殺し、そしてデヴーンをひっつかんでビーヴェスのところへと連れ帰った。
 ビーヴェスは義父でもあるデヴーンを熱いタールと硫黄の入った釜に落とし、そこに溶けた鉛を流し込み、殺した。それを見たビーヴェスの母親はショックを受け塔から転落死。二人が死んでビーヴェスたちは大いに笑った。
 さて、ロンドンにいる国王の息子がビーヴェスの名馬アルンデルを欲しがって近づくとこの馬は彼を蹴り殺してしまった。そのためビーヴェスはイングランドから追放され、ハンプトンへと帰った。ところでアスコパルドは貧乏になっており、ビーヴェスから道を聞くと、モンブランへと帰っていった。ここでこの英語詩にある名言「人は貧乏になると、友人がいなくなります」(l. 3419)。
 アスコパルドは久々にイヴォール王の前に現れ、40人の優れた騎士とともにビーヴェスたちを襲撃する準備に入った。そのときアルメニアのある森でジョシアンは今まさに出産するところだった。ジョシアンはビーヴェスと従者にしてサベールの息子であるテリィを遠ざけると、1人で双子を産んだ。しかし運悪くそこにアスコパルドの軍勢が現れ、ジョシアンを誘拐した。ジョシアンは顔が崩れる薬草を食べ、イヴォール王にそれと悟られないように変装した。イヴォール王は目の前に連れてこられた女がジョシアンであるとはわからず、アスコパルドに彼女を連れて行かせた。彼は彼女を荒野の城に連れて行き、半年間番人をしていた。
 サベールはそのことを知り、ジョシアンを救出するために12人の仲間とともにモンブランへと渡った。すぐにアスコパルドが見張っていた城を見つけると、彼らはあっというまにアスコパルドをずたずたに切り裂いて殺した。

~その後の話~

 ビーヴェスとジョシアン、産まれた双子、サベールとテリィ親子は悪いやつらをぶっ殺してロンドンの国王と和解し、あちこちに領土を持って幸せに暮らしたとさ。

 なお『世界の怪物・神獣事典』にはアスカパードがビーヴェスと戦って殺された、という物語が載っている。

 『ジョン・マンデヴィル卿の旅行』にもアスコパルド人(Ascopards)というのが出てくるが、関係あるのか?(cf. [[ジョン・マンデヴィル卿の旅行 第9章http://homepage2.nifty.com/arumukos/unnk/unncssry/mndvlltrvls/index09.html]])

関連項目


参考資料 - 参考:酒見研究室Sir Beves of Hamtoun(『ハンプトンのビーヴェス卿』全和訳)


トップ   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS