*ミュルメコレオン [#d0b0489a]
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地域・文化:博物誌

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 英語:アントライオン(Ant-lion)。~
 ドイツ語:アマイゼンレーヴェ(Ameisenlöwe)。~
 ミュルメーコレオーン。~
 中世には[[../フォルミコレオン]]と呼ばれたりもした。

 昆虫の蟻を母として、肉食獣のライオンを父として生まれた怪物。名称自体は七十人訳聖書のヨブ記が初出だが、怪物としての描写は古代末期の『フィシオログス』に登場するものが最古のようだ。フィシオロゴスが翻訳され広まる過程でミュルメコレオンの伝説も広まったようである。ヨーロッパだけではなくアルメニア、エティオピア、シリアなどにも伝播している。~
 現在、ミュルメコレオンは一般的にはライオンの頭と蟻の胴体を持つと描写される。しかし中世の写本でミュルメコレオンが書かれたものは極めて稀で、唯一それらしいものがあったとしても蜘蛛かダニのような姿で描かれていた。~

 そもそもは、旧約聖書をヘブライ語からギリシア語に翻訳するときの誤訳に端を発する存在である。

// ミュルメクス自体は、前2世紀のクニドスのアガタルキデス『エリュトラ海について』第1巻70節に登場するのが初期の例のようである。それによると、アラビアにいる種類のライオンのなかにはミュルメクスと呼ばれるライオンと呼ばれているものがいる。外見はほとんど他のライオンと変わらないが、生殖器については他のライオンと逆向きについているの。体色は黄金で、他のアラビアのライオンよりも毛皮が滑らかである(([[資料/1023]]:158; [[資料/1024]]:118.))。ミュルメコレオンの性器の話はおそらくアガタルキデスによるこの記述がもとになっているのだろう。
//アエリアヌスは『動物の本性について』XVII.42において「バビロニアには生殖器が逆向きについているミュルメクスがおり、他のもの(άλλοις)とは異なっている」と書いている(([[資料/102x]]:376-377.))。英訳では「他のもの」が"Ants elsewhere"「他の地域の蟻」と訳されているが、ここで「他のもの」が厳密にミュルメクスを指すのかどうかを断定することはできない。もしミュルメクスだとすれば、アエリアヌスにとってミュルメクスは一般的な生物種であり、バビロニアの変種だけが生殖器の点で特異だ、ということになる。ただし直前の41節後半ではライオン(λεον)について述べられており、その次の43節も豹について述べられているので、ここで「蟻」が出てくるとすればかなり唐突である。アガタルキデスを考慮に入れるならば、ここでアエリアヌスが想定していたのは「蟻と呼ばれるライオンの一種」だということになる。
**関連項目 [#ndde496f]
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-[[キーワード/蟲]] [[キーワード/ライオン]] [[キーワード/合成獣]]
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参考資料 - [[資料/120]]:

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