*ジズ [#wc22b972]
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地域・文化:ユダヤ教

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 ユダヤ伝説における巨大な鳥。

 民間語源説では、「ジズ」という名前はその肉が様々な味であることから名付けられた、とされている。この鳥の味はゼー(zeh: これ)であり、ゼー(あれ)である。だからこの鳥はジズという名前となった。~
 別名: レナニン(Renanin)、セクウィ(Sekwi: 見るもの)。~
 レナニンという名前は、ジズが天上の歌い手であるところからきている。

**終末時の食料 [#qb831aa2]
 ジズは、ユダヤ教における世界の終末の日に、ベヘモト、レヴィアタンとともに義人(つまりユダヤ教徒のこと)の食料になるとされる巨大な鳥である。ベヘモトが陸の動物、レヴィアタンが水の動物であるのに対し、ジズは空の動物である。そのためラビ文献などでは、レヴィアタンが巨大魚、ベヘモトが野牛とされ、そしてジズは野鳥(タレンゴール・ベラー)であるとされた(『詩篇』のタルグム)。タルムードにはもう1羽の巨鳥バル・ヨハニも現われるが、ジズとバル・ヨハニはたびたび混同され、同一視された。また、ジズはギリシアのフェニックスとも結び付けられた。~
 ジズは、ユダヤ教における世界の終末の日に、ベヘモト、レヴィアタンとともに義人(つまりユダヤ教徒)の食料になるとされる巨大な鳥である。ベヘモトが陸の動物、レヴィアタンが水の動物であるのに対し、ジズは空の動物である。そのためラビ文献などでは、レヴィアタンが巨大魚、ベヘモトが野牛とされ、そしてジズは野鳥(タレンゴール・ベラー)であるとされた(『詩篇』のタルグム)。タルムードにはもう1羽の巨鳥バル・ヨハニも現われるが、ジズとバル・ヨハニはたびたび混同され、同一視された。また、ジズはギリシアのフェニックスとも結び付けられた。~

**伝説 [#bce36647]
 ジズはすべての鳥の王である。立つとその脚は地上につくが、その頭は天にまで届く。大きさはレヴィアタンと同じくらいである。その翼を広げると太陽を覆い隠すほどにもなる。~
 その姿は、一般的には普通に鳥として描かれている。中世ヨーロッパのヘブライ語写本においては、ジズは首の長い鳥で、大きな卵を抱えている。また、グリフィンの姿を借りて表現されているものもある(ビブリオテカ・アンブロシアナの写本)。この写本におけるジズは前脚のないグリフィンで、上半身は翼の生えたワシ、下半身はライオンで、頭からはグリフィンやドラゴンの常として「耳のようなもの」が生えている。~
 その姿は、一般的には普通に鳥として描かれている。中世ヨーロッパのヘブライ語写本においては、ジズは首の長い鳥で、大きな卵を抱えている。また、グリフィンの姿を借りて表現されているものもある(ビブリオテカ・アンブロシアナの写本((日本語文献では、ジョルジョ・アガンベン『開かれ』の冒頭に掲載されている。)))。この写本におけるジズは前脚のないグリフィンで、上半身は翼の生えたワシ、下半身はライオンで、頭からはグリフィンやドラゴンの常として「耳のようなもの」が生えている。~
 一見巨大で非常に有害であるように思えるジズであるが、キリスト教に入ったベヘモトやレヴィアタンのその後とは異なり、基本的には神の忠実な動物であったようである。例えば、ジズは南からやってくる嵐から世界を守っている。もしジズの助けがなければ、世界はこの暴風に到底耐えられないだろう。秋分の日ティシュリに、ジズはその翼を羽ばたかせ、巨大な鳴き声をあげる。そのため、ワシなどの肉食鳥はおびえて怯み、捕食される動物たちが全滅するまで喰いつくそう、という気を失わせ、世界を安定させるのである。~
 人間に害を加えてしまうときも、それは決して故意によるものではない。ただ単にジズに比べてあまりに人間の存在が小さすぎるゆえの出来事なのである。あるとき、ジズの卵が落ちて割れてしまった。そこから流れ出た中身は60の町を洪水で流し、その衝撃は300の杉をなぎ倒した。~
 ただしこの鳥は普段は卵を大切にその巣の中で守るため、卵の洪水が頻繁に起きるわけではない。卵が腐っている時にだけ、ジズは適当に卵を蹴飛ばしてしまうのである。~
 ジズの雛は、母鳥の助けなしに卵から現われる。雛たちは、巣の中から直接現われるのである。

 ある日船に乗っていた旅人たちが、この鳥に遭遇したことがあった。その鳥の脚は水に浸かっていたが、その頭は天空にぶつかっていた。これを見た彼らは、ここでは水はあまり深くないに違いない、と考え、風呂に入る準備をした。すると天から声がして警告がきた。~
 「船から下りてはいけない! もしここから大工の斧が落ちたら、底につくまで7年はかかる!」
 彼らが遭遇したこの巨大な鳥は、ジズだったのである。~

**伝説の起源 [#s778b527]
 ジズという単語は、聖書の中では『詩篇』50:11、80:14に現われる。
 50章
 森の生き物は、すべてわたしのもの。
 山々に群がる獣も、わたしのもの。
 山々の鳥をわたしはすべて知っている。
 獣はわたしの野に、わたしのもとにいる。

 80章
 森の猪がこれを荒し
 野の獣が食い荒らしています。
(新共同訳による)~
 ここで「(野の)獣」と訳されている単語がジズである。語根ZWZ(動くこと)から派生した語で、直訳としては「動く」となる。しかし、ラビたちは「山々の鳥」と「獣=ジズ」を同義語による繰り返しの表現だと考え、ジズという言葉を神秘的な鳥だと考えたのだ。そのため、もともと聖書には書かれていないはずのジズという鳥が、聖書の『ヨブ記』などに書かれているベヘモト・レヴィアタンと同じくらい正統的な怪物であるとされてしまったのである。~
 また、ギリシア語訳70人聖書セプトゥアギンタにおいて、「山々の鳥」が「天上の鳥」と訳されたのも関係があるとされている。
 ここで「(野の)獣」と訳されている単語がジズである。語根ZWZ(動くこと)から派生した語で、直訳としては「動く」となる。しかし、ラビたちは「山々の鳥」と「獣=ジズ」を同義語による繰り返しの表現だと考え、ジズという言葉を神秘的な鳥だと考えた。その結果、もともと聖書には書かれていないはずのジズという鳥が、聖書の『ヨブ記』などに書かれているベヘモト・レヴィアタンと同じくらい正統的な怪物であるとされてしまったのである。~
 また、ギリシア語訳七十人聖書において、「山々の鳥」が「天上の鳥」と訳されたのも関係があるとされている。

 ジズとベヘモトとレヴィアタンという、すべての動物の頂点に立つ陸海空の巨獣という組み合わせはイランの神話にさかのぼるといわれている。同様の組み合わせは、おそらく同じようにイランの影響を受けたロシアの民衆宗教詩『鳩の書』にも「駝鳥、一角獣、鯨」という組み合わせで現れている。~
 しかしレヴィアタンやベヘモトと違い、ジズはギリシア語やラテン語聖書に現れるような怪物ではなかったため、キリスト教思想、特に悪魔学内ではほとんど知られていないようである。
 ジズとベヘモトとレヴィアタンという、すべての動物の頂点に立つ陸海空の巨獣という組み合わせはイランのゾロアスター教神話にさかのぼるといわれている。同様の組み合わせは、おそらく同じようにイランの影響を受けたロシアの民衆宗教詩『鳩の書』にも「駝鳥、一角獣、鯨」という組み合わせで現れている。~
 しかしレヴィアタンやベヘモトと違い、ジズはヘブライ語の言葉遊びの賜物であり、ギリシア語やラテン語聖書に現れるような怪物ではなかったため、キリスト教思想、特に悪魔学内ではほとんど知られていないようである。

**関連項目 [#hc2130d7]
-[[悪魔学/ベヘモト]]、[[悪魔学/レヴィアタン]]、[[西欧/フェニックス]]

-[[キーワード/鳥]]
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参考資料 - [[資料/290]]:; [[資料/293]]; [[資料/322]]

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