スィームルグ

Sīmurγ, Simurgh, Simurg, Semuru, Sīn bird

地域・文化:イラン、ゾロアスター教


 別名:セーンムルヴ(Sēnmurw, Sēnmurv)、セーノー・ムールーク(Sēnō mūrūk)、セーノー・ムールーウォ(Sēnō mūrūvo)、シーナムルー(Sīnamrū)など。
 アヴェスターでは、メレゴー・サエーノと呼ばれていた。

 中世ペルシア以降のイラン地域における、全ての鳥の王。長命。サエーナの木に棲んでいて、その木の実は全ての病気を癒やす力がある。しかしその木はダエーワたちによって切り倒され、枯れてしまった。そこで、スィームルグはアルブルス山に棲みついたといわれる。
 パフラヴィー語文献『ブンダヒシュン』などによると、スィームルグはどの鳥よりも巨大な存在であり、最初に創造された。ただ、それはこの世界のためではなく、この世界の鳥の王としてはカルシプト鳥が創造された。『マインヨー・イ・カルド』では、シーナムルー(スィームルグ)はあまりに巨大なため、とまっている樹は大迷惑であるという。この鳥が飛べば千の枝が折れて落ち、梢に止まればまた千の枝が壊れる。種はその大きな体の陰になってしまう。
 その姿は、アヴェスターによれば光輪に包まれている。また、『王書』には、子供を乗せるくらい大きく、人語を話し、英知を持っている、とある。また、全ての言葉も理解する。また、哲学者の様に議論することもあった。ササン朝時代のペルシアでは、犬の上半身に孔雀の下半身を持つ鳥の姿で表された*1。2本の足はふさふさしているが、足の指は鳥のように3本ある。爪は出し入れできる。翼や尾は、燃え上がる炎のようになっていた。
 スィームルグは、英雄を乗せたり、爪で運んだりし、不思議な羽を渡すことがある。

関連項目


参考資料 - 資料/348:; 資料/126:


*1 ただし近年異論も出されているようだ。未見ながら以下の論文を参照。M. Compareti, 2006, "The So-called Senmurv in Iranian Art: A Reconsideration of An Old Theory", In P.G. Borbone et al. eds., Loquentes Linguis: Studi linguistici e orientalistici in onore di Fabrizio A Pennachietti, Wiesbaden, pp.185-200.

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Last-modified: 2010-06-28 (月) 06:03:19