アル

Al
Ալ

地域・文化:アルメニア


 イラン系言語の「赤」(Āl)に由来すると考えられる妖怪(アルメニアでは男らしい)。
 アルは病気を引き起こす妖怪であり、出産のときに女性を襲撃するのが特徴である。水の中に住むともされ、それによる湿気が病気につながり人々の魂を地獄へと引きずり込む。また出産のときは、身も心も壊してしまう。
 アルメニアの女性は枕の下にハサミを置いてアル除けの道具とする。また聖キプリアノス(Cyprian)と聖シシアノス(Sisianos)も妖怪アル除けに有効な聖人であるとされ、魔除けの巻物の中にはこの2人の聖人と妖怪の姿が大ざっぱに描かれている。こうした護符は手のひらサイズの小さな本であることもあったが、それは小さくて持ち運びやすいからであった。護符のなかに描かれたアルの姿はやせ細った妖怪で、自分が襲った人々の食道や気管を持っている。その護符には次のようにある。

 聖シシアノスが山から降りてきたとき、彼は鉄の大バサミと燃えるような目の汚れた悪者を見つけた。彼は砂だらけのところに座っていた。シシアノスは尋ねた
 「忌々しい汚れたものよ、お前はどこにいくのかね?」
 彼は答えて言った
 「女どもの弱った赤ちゃんのところにいくところだ。母乳を飲みほして、目ん玉を駄目にして、脳みそを吸い取って馬鹿にして、そんで赤ちゃんを女の腹から引きずり出すつもりだが、何か?」

 また、別の護符にはこうある。 男(=アル)が砂の上に座っている。そいつの髪は蛇みたいで、爪は鉄、歯はまるでイノシシか豚のようだ。

 「俺は赤ん坊の上に座って、そいつらの耳をあぶり焼き、肝臓を引きずり出して母親も子供も苦しめる。俺たちの食べ物は子供たちの肉と肝臓だ。深淵の俺たちの王様のために、耳を聞こえなくして頭を馬鹿にしてやるのさ。家の隅っこと動物の小屋に俺たちはいる」。

 アルはなぜ女性ばかり攻撃するのかを説明する伝承がある。それによれば、アルはユダヤ教のリリスと同様に、アダムの最初の相手だった。しかしアダムはアルが気に入らなかったため、神は再び人間を創造した。それが聖書にも載っているエヴァである。アルは怒って嫉妬し、それ以降女性嫌いになったという(つまりアルは男だということか?)。

関連項目


参考資料 - 資料/336:


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Last-modified: 2008-08-20 (水) 20:40:16