ライストリュゴネス†
Laistrygones
Λαιστρυγόνες
地域・文化:古代ギリシア
単数形はライストリュゴン(Laistrȳgōn, Λαιστρυγών)。
ホメロスの『オデュッセイア』第10歌に登場する巨人種族。
オデュッセウス一行はほうほうのていでキュクロプスたちの島から逃げ出し、風神アイオロスの島で歓待を受けた。そしてこの風神の計らいによりようやく祖国まであとわずか、というところでオデュッセウスの部下たちがアイオロスの贈り物である「風袋」を宝物と勘違いして開いてしまい、アイオロスのところまで逆戻りしてしまった。もともと神々の怒りを買って放浪しているオデュッセウス一行を二度も歓待するのは恐れ多いとして、アイオロスは彼らを追い出してしまう。そこで、一行は舵を漕いで移動しなければならないのだった。
そうしたうちに、オデュッセウスたちは7日目にラモスなる人物の築いたテレピュロスという城市に船をつけた。ここは「(夕暮れに)家畜を連れ帰る牧人が声をかけると、(朝方に)家畜を牧場へ連れ出す牧人が、それに答えるということが起こる」土地であった(夜が白夜のごとく極端に短い、または存在しないということだと考えられている)。また、そこの港は非常に穏やかであったが入り口が狭く、崖が周りを取り囲んでいた。オデュッセウスの船団は多くがその袋小路の港のなかに係留したが、知将オデュッセウスの船のみは不覚に入らず、一番端に船を止めた。
オデュッセウスは崖をよじのぼって見てみたが、そこには人も何も見当たらない。そこで3人を使いに出し、どういう人々がこの地に住んでいるのか探らせにいかせた。3人は道中、この町の王であるアンティパテスの娘が泉に水を汲みに来るところに出会った。3人が娘にどのような王がこの国を治めているのか、などを聞くと、娘は即座にアンティパテスの住んでいる豪邸を示した。そこで彼らがアンティパテスの豪邸に足を踏み入れると、そこには山の峰のように巨大なアンティパテスの女房がいた。彼女は人間たちを見るとただちに集会場にいたアンティパテスを呼び、アンティパテスはあっという間に一人をつかんで殺し、料理にしてしまった。残りの二人は、これはやばいと船に逃げ帰ったものの、アンティパテスは町中に響くような大声で仲間のライストリュゴネス人を呼び寄せた。ライストリュゴネスは人間よりもギガンテスに似ていた。彼らは、岩の上から、男ひとりがようやく持ち上げられるような巨大な岩を次々と湾内の船団へと投げつけた。それによって港の外に係留していた唯一の船であるオデュッセウスのものだけは難を免れたものの、ほかの船団は完全に壊滅してしまった。ライストリュゴネスは、殺した人間たちを食料にしようと串刺しにして町のなかへと戻ったのであった。
後世の人々によれば、この国はシチリアか、またはカンパニア端のフォルミアイにあったらしい。
関連項目†
参考資料 - 資料/196:; 資料/375:294