アケローン

Acheron

地域・文化:アイルランド


 またはアヘロン。
 一言で言うと、地獄を体現している怪物である。
 アケローンの原義はギリシア神話におけるハデス(冥界)を流れる川の一つである。しかし怪物(巨人)の名前でもあるとされ、次第に冥界を意味するようになっていった。

 12世紀、アイルランドのコークの町で、トゥンダルという男が女友達の家で病気になり、三日三晩、ほとんど死んだようになって寝込んでいた。長い眠りから覚めると、トゥンダルは自分が寝ている間に見たヴィジョンを話し始めた。彼はそのとき守護天使がこの世のはるか彼方にある地を案内してくれたという。その中に怪物アケローンが登場する。アケローンはどんな山よりも大きい巨人で、両目は燃え、その口は人間9000人がすっぽり入るほど大きい。地獄に落とされた男(?)がこの口の両側を柱のように支えている。片方は両足で立ち、片方は頭で立っている。そして口の中からは、これから貪り食われようとする魂の叫び声が聞えてきていた。
 つまり、このアケローンという巨人は地獄そのものだったのである。守護天子に置き去りにされたトゥンダルは中に吸い込まれ、「涙、闇、軋み合う歯、炎、耐え難い灼熱、凍てつく寒気、犬、熊、獅子、蛇などの真只中に」いた。
 この物語はレーゲンスブルクのベネディクト会修道士がラテン語に訳し、『トゥンダルのヴィジョン』として知られるようになった。この物語はダンテの『神曲』の元ネタのひとつらしい。

関連項目


参考資料 - 資料/197:


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Last-modified: 2018-09-03 (月) 15:36:53