ムルドリス

Muirdris

地域・文化:アイルランド


 別名: スミルドリス
 『フェルグス・マク・レーティのサガ』(Echtra Fergusa maic Leite)に登場する海の怪物。7~8世紀ごろ。

 かくまっていたオーヒジ(Eochaid)を刺客たちに殺されたアルスターの王フェルグスは、代償として土地一区画と、刺客のうちの一人の母親であるドルン(Dorn)を要求した。フェルグスはドルンを奴隷として使うことにした。
 少し後、海を旅していたフェルグスは、眠っている間に海の妖精ルーホルパーンたちによって剣を盗まれ、おまけに海に落とされそうになった。彼はすんでのところで目覚めて妖精たちを脅した。海、沼、湖のどこの水中でも泳げるような力を渡せ! 妖精たちは彼にその能力(というかアイテム)を与えたが、領土内にあるロッホ・ルドラゲ(Loch Rudraige: lochといえば普通は湖のことだが、ここでは湾のこと)で使うことは禁じられていた。でもフェルグスはそこに飛び込び、恐ろしい怪物に出会った。この怪物がムルドリスである。ムルドリスの邪眼にやられたフェルグスは口が頭の後ろにまでひん曲がってしまった。陸地に逃げ帰ったフェルグスだが、その醜悪な顔では彼の王座の権利が失われてしまうことになる。そこで家臣たちは鏡をすべて取り除くなどして、なんとか7年間を無事平穏にすごした。
 しかし、あるとき彼の髪を洗っていたドルンのあまりの鈍間さに怒って鞭打ったフェルグスは、逆にドルンに醜い顔のことを指摘される。フェルグスは彼女をその場で切り捨てた。そしてムルドリスを殺すため、再びロッホ・ルドラゲへ身を投じた。彼と怪物は二日にわたって戦い、海面は血で赤く染まった。フェルガスは怪物の首を持って上陸したが、すぐに自分も倒れて死んでしまった。

関連項目


参考資料 - 資料/308:215-16; 資料/583


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Last-modified: 2015-12-12 (土) 19:02:02