イイェルケト

Ijᴇrqät

地域・文化:北米先住民・ネツィリク


 「目のあたりが独特なものたち」。また「自らの姿を(たとえば山のクレバスに)隠すものたち」という意味もあるらしい。
 山のクレバスの中に住んでいる精霊たち。その目はまばたきをするときに上から下にではなく横にまぶたが動く。また、足が非常に速く、カリブーでさえ追い越すことができる。しかしそのほかの生活は人間たちと変わらない。
 昔のこと、2人のイヌイトの女性が燃料を集めようと外に出たところ、イイェルケトの気配がした。しかしこの精霊は彼女たちをつかんで自分たちの家に運び去ってしまった。女性たちは何とかして外に出ようと努力の限りを尽くしたが、どうしても出ることができなかった。しかたないので女性たちはそのままイイェルケトの村に住むことにした。そんなある日精霊たちが外に走りに出たが、非常に足が速いため女性たちは精霊たちについていくことができなかった。そこでイイェルケトは彼女らをつかまえて脚を水の中にひたしてやわらかくし、だんだんと腫れ上がってきたところで脚から何かを切り出した。それは普通の人でいうところのすねの前部と骨のあいだの何かで、しかし骨でもなければ軟骨でもなく、イグリグトルケト(Igligtɔrqät)と呼ばれるものだった。それが外されて親指から抜き出されたのである。すると女性たちの足は非常に速くなり、イイェルケトと同じくらい走れるようになり、そしてカリブーを捕まえるくらい俊足になった。というわけで彼女たちはイイェルケトの村から逃げ出し、人々の元へと帰った。それから彼女たちは偉大なシャーマンになった。それから人々は、イイェルケトは強く、勇気があり、大胆で素早く助けてくれる精霊である、と言うようになった。

関連項目


参考資料 - 資料/331:244

2008-08-16


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Last-modified: 2013-10-15 (火) 16:31:54