ストムペ・ピルト

地域・文化:スウェーデン


 おろかな巨人。昔、フイルケスタッズの近くのバールス山から少し離れた所に棲んでいた。
 ある日、山羊使いの若者がこの丘に来て、山羊たちにそこの草を食べさせ始めた。ストムペ・ピルトが怒ったのは言うまでもない。彼は大きな火打ち石をつかんで、少年の前に現れた。そしてこういった。
 「ここまできたら、この石のように握りつぶすぞ!」
 そして、巨人はその石をつかんだかと思うと、その石は粉々に砕け、砂のようになってしまった。しかし若者は動じなかった。その上、
 「お前もこうなるぞ!」
 といって、搾りたてのチーズを取り出し、潰したのだ。愚かな巨人は若者の手から水が滴り落ちるのを見て、少々動じた。巨人は、若者に勝負を挑むことにした。勿論、実力では巨人のほうがはるかに強く、直接対決では若者には勝算はない。そこで、若者は考え、あることを思いついた。悪口を言い合うことである。若者は、巨人に
 「悪口を言い合っているうちに、だんだん腹が立ってきて、本気になるから」
 と説明し、愚直な巨人はそれに従ってしまった。
 さてまずは巨人の番。
 「お前なんか鼻のひん曲がったトロルにさらわれちまえ!」
 当然、動じる山羊使いではない。彼は
 「お前は悪魔にさらわれればいいんだ」
 というと、矢をつがえて巨人に向かって発射した。巨人は勿論痛がり、
 「こいつはなんだ?」
 と問いかけた。
 若者は悪口だ、という。
 「こいつにはなんで羽が生えているんだ?」
 「良く飛ぶようにするためさ」
 「じゃあ、なんでこう肉に刺さるんだ?」
 「お前の体に根を生やすためさ」
 さて、更に若者が悪口を言おうとすると、巨人は
 「悪口でさえこんなに痛いのに、とっくみあいじゃどうなるかわかったもんじゃない」
 と、岩穴に逃げ込んでしまい、若者は安心して山羊の放牧ができたとさ。

関連項目


参考資料 -


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Last-modified: 2010-06-28 (月) 05:26:42