竜とドラゴン

ウロボロス

名称

Οὐροβόρος,*1 Οὐρηβόρος.*2
Ūroboros(Ūrēboros)。ウーロボロス(ウーレーボロス)。ギリシア語で「自らの尾を食らうもの」という意味らしい。
自らの尾を自らの口で咬み、結果として環状になっている蛇(drakon)のことである。

起源

ヨーロッパのウロボロスの起源に限ると、古代エジプトグノーシス主義が接触したアレクサンドリアあたりで誕生したらしい。しかしこの形式の図像はヨーロッパ以外にも非常に多く見られるため、一概に起源を論ずることはできない。「ウロボロス」という名称自体は古代文書にはほとんど見られないが、エジプトなどで発見されている呪文が書かれたギリシア語パピルス(Papyri Graecae Magicae: PGM)にはみられるらしい*3。もちろんウロボロスの図像自体も非常に広く使用されていた*4

 ホラポロンの『神聖文字法』(5世紀終)*5第1巻第2章には、宇宙を書くときは自らの尾をくわえる蛇をもって表す、というようなことが書かれている。蛇は脱皮して蘇るが宇宙も一年において永劫回帰を続けるのである。また新プラトン主義者マクロビウスの『サトゥルナリア』(5世紀ごろ)第1巻第9章第12節には「フェニキア人は……ヤヌス神を環状の蛇(draco)が自らの尾をむさぼるように描くが、これは宇宙(mundus)がそれ単独で生き、自ら円環運動するということを説明するためであった」とある*6。リュドゥスの『暦について』(De Mensibus), III, 4には「エジプト人はピラミッドに蛇がその尾を食べている彫刻をするという聖なる伝統に従う」とある。ざっと並べてみたがこのあたりが「尾をくわえる蛇」の描写としては古いものらしい。ホラポロンやリュドゥスがエジプトにその起源を求め、マクロビウスはフェニキアの例を挙げているが、ちょうどこれはシリア・エジプト型グノーシス主義の分布に当てはまる感じがする。
 また、時代は下るが12世紀ごろの『ヴァチカン神話誌』第3巻第1章第1節は「人は、サトゥルヌスを神々の最初のものと考えている。彼らはサトゥルヌスについて、憂えた顔をした老人で、灰色の頭髪に、灰色の外套で頭を覆っている、と想像している。サトゥルヌスは自らの子どもを食らう者であり、鎌を持ち、さらに、右手には、自らの尾の端を食う、炎を吹くドラゴンを持っている」と述べている*7
 そもそも宇宙を表現するものとしてのウロボロスはエジプトに端を発するらしい。図像的なものとしては冥界の蛇メヘンが知られている。

錬金術


*1 Henry George Liddell and Robert Scott, 1996, A Greek-English Lexicon with a revised supplement, 9th edition, p. 1274.
*2 Ibid., p. 1273.
*3 See n.1.
*4 Hans Dieter Betz(ed.), 1997, The Greek Magical Papyri in Translation, vol. 1, p. 337.
*5 http://web.kyoto-inet.or.jp/people/tiakio/hieroglyphica/hieroglyphica.htmlに全訳あり。現在邦訳出版企画中らしい。
*6 Ed. and tr. by Robert A. Kaster, 2011, Saturnalia Books 1-2, LCL 510, London: Harvard University Press, pp. 94-97.
*7 Ronald E. Pepin (tr.), 2008, The Vatican Mythogprahers, p. 210.

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Last-modified: 2012-07-06 (金) 16:45:42 (1965d)