極端な記譜法

垂直方向の極端な例

参考までに:ストラヴィンスキーの《春の祭典》(1913)は最大35段で、およそ38声部が記譜されている。[未見だがWikipediaによるとイタリアの作曲家アルド・クレメンティの《ヴァリアンテA》は144段を使っているようなので、以下のリゲティの記録はすべてクレメンティに抜かれたことになる]

記譜された最多段

  1. リゲティの《アトモスフェール》(第3版)は15ページ目で77段を使っている。初版(1961)では「たったの」70段だった。56声部の弦楽器はどちらでも完全に分割されている。
    [以下に抜粋。これでもすべての楽器ではなく、フルートとオーボエあわせて8パートは音を出していない]
    http://www.toroia.info/images/Ligeti77.png
    • 次点:ペンデレツキの交響曲第1番(1975)には71段のところがある(ショット版が2つあって、一方では33ページ目、他方では43ページ目!)。(彼は大オーケストラを用い、46声部の弦楽器は完全に分割されている。)注:この記譜法はペンデレツキが多用しているが、慣習的な記譜法ではないので、ここに含まれないということもできる(私は説得的ではないと思うが)。
      カーターの《管弦楽のための協奏曲》(1969)の最後のほうのページには61段がある。
    • 大差はあるが古い例として、ベネヴォーリ[現在ではハインリヒ・ビーバー作とされる]の《ザルツブルク大聖堂ミサ》(1628)は53段を使っている。[以下に1ページ目の抜粋。この画像自体は20世紀初めの版。それにしても17世紀前半にこんな多段譜!]
      http://www.toroia.info/images/Salzburg.png

記譜された最多声部

  1. リゲティの《アトモスフェール》(初版13ページ)で79声部。
    • 次点:ペンデレツキの交響曲第1番、71段あるところで71声部。
      カーターの《管弦楽のための協奏曲》(1969)、61段あるところで69声部。
    • 大差あるが次点としてクセナキスの61の楽器のための《メタスタシス》(1954-55)で、全体にわたって全員が別個のパートを演奏している。

記譜された最多パート。

注:「パート」はうまく定義できないし、数字もまたしかり。

  1. リゲティの《アトモスフェール》は少なくとも80のパートがある。
    • 次点:ペンデレツキの交響曲第1番。

「和音」における最多符頭(つまりクラスターでない)

和音=1つの声部で、全音符以下の場合1つの符尾にまとまって同時に発音される音符。

  1. スクリャービンのピアノソナタ第7番の最終ページで24個。[以下に抜粋。3小節目。上段に20、下段に5ある。なので元ページの24というのは間違い。音符の黒さに気を取られてしまうが、加線も9本あって、和音の最高音はピアノの最高音であるC8だ。全体としてはD♭、F♭、G、A、Cの和音を5オクターヴ積み重ねたものにアルペジオ記号をつけたもの]
    http://www.toroia.info/images/Scriabin7.png
    • 次点:アルカンの《三つの大練習曲》第2番で19個(3オクターヴにわたる)。
      アイヴズの《ニューイングランドの三つの場所》の「ストックブリッジのフーサトニック川」の最終ページのピアノで16個。

記譜法にかかわらず、「和音」の最多音

  1. ヨーゼフ・シュヴァントナーの《マガブンダ》(1983)の第2楽章の冒頭近くで88音(クラスター表記)。
    • 次点:カウエルの《虎》(1928)で53音(クラスター表記)。

縦で数えた最多音

  1. 未エントリー

1つの符尾がまたぐ段数

  1. クラムの《ブラック・エンジェルズ》(1970)には4段をまたぐ符尾がある。それぞれの段に音符がある。

1つの楽器または奏者への最多数

  1. 1つの楽器・奏者への同時最多音:カウエルの《虎》がピアノに対して57音(クラスター表記)。
  2. 1つの楽器・奏者への最多段:クセナキスの《シナファイ》(1969)、94~99小節目がピアノに対して10段(!)。
  3. またナンカロウの《プレイヤー・ピアノのための習作》第27番(出版は1977年)も10段あるが――楽器はあるにせよ奏者はいない。
    • 次点:ソラブジの《オプス・クラヴィチェンバリスティクム》(1930)でピアノに5段。
  4. 1つの楽器・奏者への最多声部:バッハの《音楽の捧げ物》の「六声のリチェルカーレ」で6声部。
    [《シナファイ》の10段のところは、パルスだが13声部ある]

1つの段への最多数

*同時最多声部

  1. バッハの《イギリス組曲》第1番(1725?)の2~3小節目に一時的に5声部出てくる。[以下に抜粋]
    http://www.toroia.info/images/English5.png
    [要するに、次のように5声部にわかれる、ということになるのだろうが、これを演奏してみてもほぼユニゾンだし、元ページのコメントにあるように、和音にタイでつながっているだけである]
    http://www.toroia.info/images/English5p.png
    • ベートーヴェンのピアノソナタ第2番「月光」第3楽章の162~165小節目や、同第23番「熱情」(1806)第1楽章の123小節目にも出てくる。
      いずれにしても、単に、別々に発音されて1つの和音にタイでつながるということである(ベートーヴェンの場合、単一の声部と独立した声部の両方として、2つ符尾がついている)。
  2. 1つの段に明確に区別された4つの声部が出てくるのは、バッハの《音楽の捧げもの》の「六声のリチェルカーレ」の鍵盤楽器版と、Dame Myra Hess編の《主よ、人の望みの喜びよ》の29~31小節目。
    • 4声は、ベートーヴェンのピアノソナタ第11番(1800)第1楽章の91~103小節目に出てくる。しかしこれは発音のリズムが書かれたアルペジオでしかない。
    • また、ベートーヴェンのピアノソナタ第2番(1795)第1楽章の272小節目、第3番第1楽章の221~225小節目、ピアノソナタ第11番(1800)第1楽章、91~103小節目にも出る。ブラームスの間奏曲第1番にも繰り返し出てくる。ただいずれも発音のリズムが書かれたアルペジオである。
    • 4声はバッハのヴァイオリンソナタとパルティータや、ブラームスの《ロマンス》第5番に繰り返し出てくるが、それぞれの声部が完全に独立しているとはみなしがたい。
  3. 次点:3声部は、2段で書かれた鍵盤楽器のためのフーガでは珍しいものではない。
    • たとえばバッハの《平均律》第1巻の嬰ハ短調フーガ、《ゴルトベルク変奏曲》第16変奏など。
    • 対位法的ではない鍵盤音楽でもないわけではない。たとえばシューベルトの歌曲《乙女と死》。
    • 大管弦楽のための作品での木管の段もそうだろう。
    • ウッディ・ガスリーへのトリビュートの《Vigilante Man》のようなもっと簡単な例もある。メインのリズムが普通サイズの音符で、(別の歌詞のための)2つの変奏が小音符で書かれていて一方の符尾は上向き、他方は下向きである。
    • ショパンの夜想曲第2番では、1つの段に、3(そして4)声を明らかに意識した連桁の方向づけがされているところがある。しかし同時にみると1か2つの音符しかない。

1つの「和音」での最多装飾音

  1. パガニーニの《カプリース》ト長調第10番で4つ。
  2. メシアンの《異国の鳥》も4つ。

最多のバス声部の数字

  1. ジャン=フェリ・ルベルの《四大元素》(1737)の「混沌」冒頭に、低音のDと、6b 5 4 3 2 7#からなる数字が付されている。

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Last-modified: 2014-05-20 (火) 23:15:59 (1221d)