竜とドラゴン

皇帝の象徴

 一般的に、中国では竜は皇帝の象徴である。

竜の子孫

漢の高祖

 象徴どころか、ストレートに竜の子供であるという伝説もある。たとえば、漢の高祖は蛟竜と母親の間に生まれた。ために竜顔と呼ばれるのである(『史記』高祖本紀第八)。

孔子と蒼竜

 晋代の『王子年拾遺記』を引く『太平広記』巻四百十八によると、孔子が生まれる夜、二頭の蒼竜が天から降りてきて、母親の部屋に寄り添ったという*1

古代地中海の類例

「竜」ではなく「蛇」だが、古代地中海には、蛇と女性が交わって高貴な存在が生まれるという信仰が広く認められた。もっとも有名なのはマケドニア出身のアレクサンドロス大王である。

 また、ローマ人のゲリウスによれば、スキピオ・アフリカヌスも蛇から生まれたという。
 彼の母親は、長い間不妊に悩まされていた。夫のスキピオも子供をあきらめていた。しかし、夫が不在のおり、妻が自室で横たわって寝ていると、ふと巨大な蛇が傍らに寝そべっているのに気付いた。ヘビは、それを見た家の者たちが驚いているあいだに姿を消した。夫はこの出来事を占い師たちに話し、占ってもらった。すると「子供が生まれるであろう」という結果が出た。まもなく妻は懐妊している兆候と感覚を覚え、それから10月後に出産した。(『アッティカの夜』第6巻1.2-4*2)
 もちろんこの逸話は、母親と蛇が具体的に性交したことを示すものというより、蛇がいたことを「兆し」と見なしたものではあるが、それでも蛇と英雄の出産というモチーフを見てとることは十分に可能である。

 スエトニウスによれば初代ローマ皇帝のアウグストゥスも同じような出生の仕方をしたという。彼はアウグストゥスが誕生する前には実に様々な予兆のようなものが認められた、と書いている中で、メンデスのアスクレピアデスが著した『神々の談論』という本のなかで、次のような物語を読んだと言っている(スエトニウス『ローマ皇帝伝』第2巻「アウグストゥス」94節**3)。

 アウグストゥスの母であるアティアは、毎年行なわれる祭儀のためにアポロン神殿にやってきて、神殿に臥輿を置き、ほかにもいた貴婦人たち(もう寝ていた)とともにまどろんでいると、大蛇が突然自分の中に入っていき、しばらくして出ていった。アティアは何か性的なことをされたと感じ、すぐに身を清めた。すると彼女の体に大蛇のようなアザが現れ、どうしても消すことができなかった。それから10ヶ月ののち、アウグストゥスが生まれた。そのためアウグストゥスはアポロンの息子だといわれた。
 またアティアは出産のとき、自分の腸が天上の星まで運ばれ、それがほどけて伸び、全天全地をぐるりと回った夢を見たという。

cf.夜這いする蛇神

爪の数


*1 太平広記読書会、2008、「『太平広記』訳注 巻百四十八「龍」一(上)」『国語国文学研究』43, p. 72.
*2 大西英文(訳)『アッティカの夜 1』pp. 324-325。
*3 国原吉之助(訳)『ローマ皇帝伝(上)』pp.190-91。

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Last-modified: 2016-09-02 (金) 01:50:17 (267d)