竜とドラゴン

たとえば装飾や民衆藝術においては、人間と彼が属する民族という集団との間に、いっそう密なつながりが見られるというのも真実ではないだろうか。……しかし、……幾何学文様が盛期中世の始まりに再び現れ、地中海的な人体中心の表現を覆い尽くしてねじ曲げていくときに、そうした事態は南北ふたつの民族の衝突というよりは、むしろふたつの異なる時間の出会い、あるいはいっそう明確に言うなら、人間のふたつの状態の出会いなのである。

アンリ・フォシヨン『かたちの生命』

はじめに

 このウェブサイト「竜とドラゴン」は、ウェブサイト「幻想動物の事典」のサブコンテンツです。書いている人間(toroia)が幻想動物のなかでも特にこだわりをもっている竜とドラゴンについて、事典の項目とは少し異なった書き方で紹介しようと思っています。

 「竜とドラゴン」と題すると、少なくとも2つの問題点が出てきます。
 まず、「竜」と「ドラゴン」の定義というか、範囲です。厳密に言うと「竜」は漢字であり、漢字で「竜」だと書かれているもの以外は確定的に「竜」に含めることはできません。「ドラゴン」のほうは英語のカタカナ書きであり、英語で「ドラゴン」だと言われているもの以外は確定的に「ドラゴン」に含めることはできません。しかしそれでは事典の項目とさして変わらない内容になってしまうのが目に見えています。
 そこでこのウェブサイトで重視したいのが、漢字でいう竜や英語でいうドラゴンの起源や系統、出自、変化などです。一言でいうなら竜とドラゴンの系譜学ということになるでしょうか。
 だから、たとえば中国でいう竜王はインドのナーガ(大蛇神)が起源だからナーガを書くことになるし、それがジャラプラバやグラハヴァッタなど中央アジアの諸言語でどのように変化してきたも書くことになるだろうし、またドラゴンは言語学的にはギリシア語の「大蛇」が起源だから、ギリシアの大蛇の怪物を扱うことにもなり、さらにさかのぼると印欧祖語に行きつき、そこからアイルランドの怪物ムルドリスやナーガの別称ドリグヴィシャへ再び下っていくことになるわけです。そのうち、それこそフーコー的な系譜学のように、「竜論」論も書くことになるでしょう。
 また、神話学や宗教学など現代の学問でも専門用語として「竜」や「ドラゴン」が使われることがありますが、それはもちろん中国やイギリスの怪物に限るものではありません。蛇の要素の強い怪物は竜やドラゴンと言われることが多いようなのです。そう呼ばれる理由には上記の系譜的な理由もありますが、竜やドラゴンの見た目や象徴と共通点がある、という理由もあります。象徴もそうですが、「見た目」をあなどってはいけません。見た目が似ているものを比較することによって、竜やドラゴン(を信じる人々の心)の見えざる一面が明らかになることもあるからです。表面上の類似にすぎない! というのはその類似を説明できないだけの言い訳です。
 もう一つ、「竜とドラゴン」を並べることの問題です。あえてこう言わせてもらいますが少しだけこだわりのある人なら、この二つは徹底的に別ものだ、竜は畏怖の対象であり善だが、ドラゴンは退治される対象であり悪だ、ということを言いたいでしょう。しかし私は少しだけこだわりのある人ではなく徹底的にこだわりのある人だと(自分で)思っています。私にいわせるならば、このような二つの区別はあまりにいい加減で具体的な事例を無視しているだけの思い込みでしかありません。竜とドラゴンの系譜学からやろうと思っているのは、この両者の系譜の、実は無関係でないどころか錯綜とした関係を解きほぐしていくことによって、単純な善悪=東西二元論からこの幻想動物を解放できないだろうか、ということなのです。それが成功するのか否かは、わかりませんが。さしあたり、もっとも大きな問題は、「竜とドラゴンは同じである」と主張することに何らかの正当性が認められるとすれば、他のさまざまなものも「同じである」と言わざるを得ない状況に陥ってしまうことでしょう。とはいえ私はそういう状況をむしろ好んで受け入れたいと思っていますが。
 要するに、このウェブサイトの目標は、竜とドラゴンの系統樹を書くこと、ということになるでしょう。そのため、必然的にあまり有名ではない古代メソポタミアや印欧語族についての話題が多くなっていると思います。しかし私の考えでは、この二つこそ大きな意味を持っているのです(とくにドラゴンの系譜学に対して)。

 すべてのコンテンツは未完成ですが、これは先のビジョンが未知のものだという意味ではなくて、単に書きかけでも容赦なく公開している、という意味です。

 原典や原典が載っている本からの引用は『太字』にしています。スレートブルーの文章は、原典から引用・要約した物語。

このように浮き彫りになっている段落は、物語以外の原典からの引用。適当に現代語訳。

注釈*1←これは、ほとんどの場合参考にした資料の名前とページを書いているだけです。余談は注釈にいれず、カットするか、本文にさりげなく挿入しています。

パターン別

これ以下のものは、便宜上地域わけしていますが、あまり厳密なものではありません。

アジア

インド

東アジア

日本

アジア諸地域

オリエント

メソポタミア

エジプト

シリア

ヘブライ

アナトリア

アラビア、トルコ

イラン

ヨーロッパ

ギリシア・ローマ

先史時代

キリスト教

西欧全域

ゲルマン

ケルト

フランス

スラヴ・バルトその他

アフリカ(サハラ以南)

オセアニア

アメリカ

Books


*1 このウェブサイトでは全然参考にしてないけど、こういうのの書き方はChicago Manual of Style. 15th ed.が参考になります。

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Last-modified: 2010-11-03 (水) 01:40:11 (2516d)