竜とドラゴン

道教の竜

 こういうページを「」ページとは別に作ってみたものの、これは日本で「神道の竜」と「民間信仰の竜」というのを分けるのと同じくらい曖昧というか完全にかぶっている。
 そもそも道教の定義自体が明確ではないし、それは老荘思想を含むのか、現代の民間信仰をどこまで取り入れるのか、といった時代や思想の問題もあるが、民間信仰が基盤になって発展してきた民俗宗教は大抵このような定義の難問を抱えているのであって、ここで深入りしてもどうしようもない。
 平河出版社の『道教事典』には「龍」(石田憲司)の項目も「龍王」(中野美代子)の項目もあるが、「龍」のほうの説明は、一般的な中国の竜の説明とさしてかわりばえしない。「龍の信仰」の項目が強いて言えば道教と深いかかわりがある記述と言ったところだ。たとえば不老長寿という道教信仰の願いの一つは天上の竜への憧れとなるし、そして竜の出現を期待する神仙説話が生み出される。海浜地域では海の神として祭られ、河川湖沼の神として、また降雨の神として祭られている、というのも道教祭儀に関連があってのことである。「龍王」のほうは仏教的な龍王が中国独自の四海龍王へと変容し、『西遊記』や『封神演義』などでは英雄にいじめられる物語が生まれ、皇帝の象徴としての竜と竜王の力の差を明記している。また、民間信仰では「竜王爺」として祀られている、とする。

 ここでは「中国文化圏における信仰の対象・神としての竜」をここに主に載せることにする。神獣としての竜は「」、動物としての竜は動物の長たる竜格下の竜……という風に分けてみたい。

五大竜王

そもそも、道教の竜王は竜ではない。仏教の竜王と同じく、見た目はどうみても人間なのである。かといって仏教の竜王のように頭に竜をいただいているわけでもなさそうだ。鄭正浩が紹介している四海竜神の絵画をみると*1、一人だけ悪魔のような怖い顔をしているものの、あとは正に「老・壮・青」といった感じの顔をしているものばかりだ(老・壮・青と揃っているところを見てみると、「怖い顔をしている」竜神は、もしかしたら「鬼」つまり幽霊の顔をしているのかもしれない)。
こういう図像的観点から見ると、「道教の竜」というページを独立させてみる理由は付会できる気がする。どうでもいいですね。

道教経典のなかの竜王リスト

 道教経典のなかには、竜王が仏教の竜王のように並んでいるものがある。仏教のそれと同じく、雨乞いの儀式に使うもののようだ。経典成立年代は唐宋代。

『太上洞淵説請雨竜王経』

王育成校訂、『中華道藏』第三〇册、p. 124より。
まず冒頭、五大竜王。そして、

  1. 日月竜王
  2. 星宿竜王
  3. 天宮竜王
  4. 竜宮竜王
  5. 天門竜王
  6. 閻羅竜王
  7. 地獄竜王
  8. 天徳竜王
  9. 地徳竜王
  10. 天人竜王
  11. 飛人竜王
  12. 蓮花竜王
  13. 花林竜王
  14. 五岳竜王
  15. 山川竜王
  16. 殺鬼竜王
  17. 伽羅含鬼竜王
  18. 小吉竜王
  19. 金光竜王
  20. 金色竜王
  21. 陽炁竜王
  22. 陰炁竜王
  23. 医薬竜王
  24. 獅子竜王
  25. 鎮国竜王
  26. 鎮宅竜王
  27. 銭財竜王
  28. 井竃竜王
  29. 金銀竜王
  30. 珍宝竜王
  31. 庫蔵竜王
  32. 富貴竜王
  33. 五岡竜王
  34. 五穀竜王
  35. 金頭竜王
  36. 衣食竜王
  37. 官職竜王
  38. 官禄竜王
  39. 江海竜王
  40. 雲海竜王
  41. 淮海竜王
  42. 山海竜王
  43. 淵海竜王
  44. 国土竜王
  45. 州県竜王
  46. 城市竜王
  47. 霊壇竜王
  48. 風伯竜王
  49. 震動竜王
  50. 雷雨竜王
  51. 大雨竜王
  52. 散水竜王
  53. 天雨竜王

「州県竜王」「城市竜王」などは、祈祷する土地ごとに違った竜王を指す、ということなのだろうか。

太上元始天尊説大雨竜王経

曽召南校訂、『中華道藏』第六册、p. 218より。

  1. 清浄竜王
  2. 大地竜王
  3. 法海竜王
  4. 妙羅竜王
  5. 修吉竜王
  6. 受愛竜王
  7. 大海竜王
  8. 烈厲竜王
  9. 浄目竜王
  10. 師子竜王
  11. 蠡声竜王
  12. 金色竜王
  13. 金明竜王
  14. 黒髪竜王
  15. 大雨竜王
  16. 天師竜王
  17. 雷電竜王
  18. 九江竜王
  19. 水帝竜王
  20. 翅羅竜王
  21. 娑山竜王
  22. 大焚竜王
  23. 願受竜王
  24. 伊羅竜王
  25. 降雨竜王
  26. 恒河竜王
  27. 妙法竜王
  28. 天華竜王
  29. 宝蓋竜王
  30. 甘露竜王
  31. 仙真竜王
  32. 浄月竜王
  33. 非人竜王
  34. 有徳竜王
  35. 天降竜王
  36. 地降竜王
  37. 左右竜王
  38. 白虎竜王
  39. 青色竜王
  40. 竜鱗竜王
  41. 尊聖竜王
  42. 真聖竜王
  43. 閻羅竜王
  44. 上帝竜王
  45. 黄色竜王
  46. 法門竜王
  47. 変化竜王
  48. 千万竜王
  49. 諸天竜王
  50. 感天竜王
  51. 感地竜王
  52. 威徳竜王
  53. 法身竜王
  54. 念経竜王
  55. 雨水竜王
  56. 四大竜王
  57. 達利竜王
  58. 頂拝竜王
  59. 大法竜王
  60. 妙徳竜王
  61. 無上竜王
  62. 国主竜王
  63. 太上竜王
  64. 道徳竜王
  65. 宣化竜王
  66. 真人竜王
  67. 老君竜王
  68. 家令竜王

いくつか仏典由来の竜王の名があるのが特徴的か。


*1 鄭正浩「水の神々」『しにか』8.1(1997): 73。

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Last-modified: 2007-10-24 (水) 05:10:32 (4403d)