シャイターン

Shayṭān

地域・文化:アラビア


 『クルアーン』などに登場する悪魔のこと。イスラームにおける代表的な悪霊の一つ。
 イブリースと違い、クルアーンでは多くの場合定冠詞がついて「アル=シャイターン」となる。
 ジンを5つのレベルにわける説では、シャイターンは三番目に強いジンだとされる。

語源

語源はヘブライ語のサタン(シャーターン)で、こちらも旧約聖書では多くの場合定冠詞がついて「ハ=シャーターン」となる。第一音節のāがayになったのは、アラビア文字のヤー(ya)が初期クルアーン写本(とくにヒジャージー体)においてāという母音の代替文字(mater lectionis)であったためであるらしい。この読み方はその後最終母音にのみ適用されるようになったので、本来はシャー(shā-)ターンと読むはずだった単語がシャイ(shay-)ターンになったのだという*1

イメージしにくい方のための説明

 どういうことかというと、昔はヘブライ文字もアラビア文字も一般的に母音を書かず(そもそも母音文字がなかった)、子音のみ表記していた。だからまずヘブライ文字の時点でシャーターンはŚṬNだった。ŚとṬ、ṬとNのあいだにくる母音はいずれもāである。アラビア語では、おそらく外来語だったために母音を表記しておかないと発音がわからなくだろうという考えから、一部の子音文字で母音を代替するという表記が行なわれた。それがこの初期クルアーン写本のヒジャージー体の場合Yであり、アラビア文字での表記はŚYṬYN(シャーターン)となった。しかし後にYがāを代替するというやり方は、Yが単語の最後の母音であるときにのみ適用されるようになった。ŚYṬYNの場合、だからŚYṬāNになる。そして文法上最初の子音には母音がつかなければならないのでŚaYとなり、全体としてŚaYṬāN(シャイターン)になった、というわけである。

関連項目


参考資料 - 資料/164; 資料/31


*1 資料/577:680

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Last-modified: 2011-12-06 (火) 15:04:01