ルフ

Rukh, Rukhkh

地域・文化:アラビア


 英名: ロック(Roc)。
 アラビアの伝説登場する巨大鳥。姿は鷲に似ているが、その体は爪で象をつかむことが出来るほど大きく、象を食べる蛇をも食らうという。インド洋のとある島に棲んでおり、マルコ・ポーロはマダガスカル島の話だとしている(そのせいで、この鳥の正体は絶滅したエピオルニスだという話もある)。シンドバッドがある小島に一人取り残されたときのこと。彼は木に登り、とても大きな白いドームを発見した。その周囲は150歩。なんだろうと思っていると、空が暗くなって突然ルフがやってきた。実は白いドームはルフの卵だったのである。シンドバッドは機転を利かせてこの鳥の足に自分を縛り付け、島から脱出したのであった。なお、「アラジンと魔法のランプ」では、ランプの魔神はルフの奴隷だということである。
 マルコ・ポーロ以来、ヨーロッパでもよく知られるようになったらしいが、どちらかというと『アラビアン・ナイト』に登場してから有名になったというほうが正しいようである。

 ルフについての最古の文献は(アル=ジャーヒズではないかと言われることがあるものの)イブン・シャフリヤールの『インドの驚異』(10世紀)が確実なものらしい。ルフはそれ以来、アラビアの「驚異(アジャーイブ)」文献には頻繁に登場するようになる。他方ではアル・アービー(1030年没)のように、その伝説の一部(羽根あるいはクチバシに若返りの効果がある)をほら話(kadhib)だとして否定する著述家もいたようだ*1

 語源については、スィームルグのルグがルフになったのではないか、という説がある。

絵画

http://www.toroia.info/images/Rukh_DharmDas.jpg
インドの画家ダルム・ダース(Dharm Dās)による、たぶんルフ。《インドの王女がバフラーム・グールに語ったお話》(ニザーミーの写本より。アクバール派)*2。ルフと思しき巨鳥の足元に一人の男がしがみついている。尾羽の派手さや鶏冠は中国の鳳凰画の(間接的な)影響によるものだろう。巨鳥と男の組み合わせに対し、左下の都市に住んでいる人々が見上げて驚いているのだが……
http://www.toroia.info/images/Rukh_DharmDasA.jpg
全体を見ると、下のほうでは人々がのんびり畑を耕したり牧畜したりしている。

鳥ではない?

 ところで、イスファハーンの著述家シャラフ・ア=ッザマーン・アル=マルワジーの著した『キターブ・タバーイ・アル=ハヤワーン』(1100年ごろ)やデリーの著述家ヌール=ッディーン・ムハンマド・アウフィーが著した動物書『ジャーミウ=ル=ヒカーヤート・ワ・ラワーミウ=ル=リワーヤート』(1228-1254年ごろ)によると、ルフは鳥ではない。
 ルフはラクダに似た動物で、コブが2つある。前歯もあり、そして四肢や胴体全てに毒性がある。さらに、その血液、唾液、糞尿すべてが致死性の毒である。その目に留まった動物はなんであれルフの餌となる。というのも、この動物は風のように素早く走るため、どんな動物でも追いつかれてしまうからである。たとえば高い木の上やルフが登ってこれないような高台に逃げたとしても、この動物は近くにとどまり、尾を大きく広げる。そしてそのシャベル状の膜に排尿し、それを上方に投げつける。この尿は猛毒だから、かかった人間は死んでしまう。
 こうした理由からインドの賢者たちはチェスのとある駒にこの動物の名前をつけた(英語で言うルークがそれ)*3

関連項目


参考資料 - 資料/419:298; 資料/420:288; 資料/478:180; 資料/492


*1 資料/492.
*2 資料/478:pl.180.
*3 資料/419:298; 資料/420: 288.

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Last-modified: 2013-09-14 (土) 21:05:34 (2016d)