フンババ

Ḫumbaba

地域・文化:アッカド


 シュメール語、古バビロニア語版『ギルガメシュ叙事詩』などではフワワ。
 『ギルガメシュ叙事詩』の中で、エンリル神の選任によって杉の林を守っていた怪物。
 フンババの彫像は、醜く、手はライオンのそれで、髪とヒゲは長く伸びているように表現された。ただ、基本的にその姿は「人間」である。竜や牛など、ほかの動物の面影は見られない。

 ウルクの王ギルガメシュとその友人エンキドゥは、2人で杉の森の怪物フンババを退治することを決めた。エンキドゥは悪い夢を見てギルガメシュに話すが、ギルガメシュは彼をなんとか元気づけたらしい。メソポタミアでは夢占いが頻繁に行われており、夢の内容は現実に直結すると考えられていた。エンキドゥは続いてフンババの恐ろしさをギルガメシュに語り聞かせた。フンババは森を守るためにエンリルによって任命されたものであり、その叫び声は洪水、口は火、息は炎であると。
 ウルクの長老たちもエンキドゥと同じようにギルガメシュがフンババ退治に行くのを押しとどめようとした。しかも、神託まで凶を示していた。でも、ギルガメシュの決意は揺らがない。
 まずは森の門番との対決であるが、ここは粘土板の欠損があって具体的な描写はわかっていない。しかし、ギルガメシュがびびってエンキドゥが励ましているということは分かっている。また、ここでエンキドゥは呪われた森の門に触れてしまっている。
 それからしばらく進み、2人は斧で杉の伐採をはじめる。それに気付いたフンババは警告したが、太陽神シャマシュらが2人を励ました。シャマシュはギルガメシュの祈りを聞き、八つの強烈な風をフンババに向かって吹きつけ、あっという間に降参してしまった。フンババはギルガメシュの下僕になる、杉の家を建ててやる、と命乞いをしたが、エンキドゥはギルガメシュに「フンババの言うことを聞くな。生かしてはならぬ」と言った。というわけでギルガメシュとエンキドゥは3回にわたってフンババの首を切りつけ、そして切り落とした。
 物語の続きはアルー参照。

 Khumbaba, chumbabaなどと表記されることもあるが、それはアッカド語のHが現代ヘブライ語やアラビア語でkhやchに転写される文字と似たような発音(スコットランド語のlochのchにも近い)であると考えられているため。普通はHの下にドットをつけたḪで表記される。しかし、メソポタミアの言語には普通のHはなくすべてkhのHなので、メソポタミア専門の資料では単にHと表記されることもある。

 ホルヘ・ルイス・ボルヘスは『幻獣辞典』の「フンババ」(日本語訳では「ハンババ」)の項目に、ゲオルク・ブルックハルトなる人物が1952年にヴィースバーデンで出版したギルガメシュ叙事詩の再編成版には、フンババが次のように描かれていると紹介している*1

彼は前足が獅子で、角のように硬い鱗で全身をおおわれていた。
足には禿鷹の爪を、頭には野牛の角を生やしていた。
尾と男根の先端はそれぞれ蛇の頭になっていた。

 戦後に訳されたにしてはかなり原文から乖離した突飛な「再編成」だが、『幻獣辞典』に載っているだけあり、それなりに広まっている。しかしブルックハルトによるギルガメシュ叙事詩の翻訳なるものは今のところ見つかっていない。ボルヘスによくある「創作」の可能性がある。

関連項目


参考資料 - 資料/225:; 資料/351:


*1 資料/197:113.

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Last-modified: 2013-10-06 (日) 12:28:12 (2659d)