フンババ†Ḫumbaba
地域・文化:アッカド シュメール語、古バビロニア語版『ギルガメシュ叙事詩』などではフワワ。 ウルクの王ギルガメシュとその友人エンキドゥは、2人で杉の森の怪物フンババを退治することを決めた。エンキドゥは悪い夢を見てギルガメシュに話すが、ギルガメシュは彼をなんとか元気づけたらしい。メソポタミアでは夢占いが頻繁に行われており、夢の内容は現実に直結すると考えられていた。エンキドゥは続いてフンババの恐ろしさをギルガメシュに語り聞かせた。フンババは森を守るためにエンリルによって任命されたものであり、その叫び声は洪水、口は火、息は炎であると。 Khumbaba, chumbabaなどと表記されることもあるが、それはアッカド語のHが現代ヘブライ語やアラビア語でkhやchに転写される文字と似たような発音(スコットランド語のlochのchにも近い)であると考えられているため。普通はHの下にドットをつけたḪで表記される。しかし、メソポタミアの言語には普通のHはなくすべてkhのHなので、メソポタミア専門の資料では単にHと表記されることもある。 ホルヘ・ルイス・ボルヘスは『幻獣辞典』の「フンババ」(日本語訳では「ハンババ」)の項目に、ゲオルク・ブルックハルトなる人物が1952年にヴィースバーデンで出版したギルガメシュ叙事詩の再編成版には、フンババが次のように描かれていると紹介している*1。 彼は前足が獅子で、角のように硬い鱗で全身をおおわれていた。 足には禿鷹の爪を、頭には野牛の角を生やしていた。 尾と男根の先端はそれぞれ蛇の頭になっていた。 戦後に訳されたにしてはかなり原文から乖離した突飛な「再編成」だが、『幻獣辞典』に載っているだけあり、それなりに広まっている。しかしブルックハルトによるギルガメシュ叙事詩の翻訳なるものは今のところ見つかっていない。ボルヘスによくある「創作」の可能性がある。 関連項目† |