毒竜

Dokuryu
どくりゅう

地域・文化:中国


 悪性の竜たちのこと。仏教文献、とくに西域関係のものに多く現れる。
 たとえば『宋雲行紀』には以下のような伝説が載せられている。むかし、非常に寒く、一年を通じて雪が積もっている不可依山(カンダハール峠?)の池に毒竜が住んでいた。あるとき、三百人の商人がこの池のほとりに停泊したが、たまたま竜の忿怒をかい、全員殺されてしまった。近くの漢盤陀国の国王はこの事件を耳にして、王位を捨ててウジャーナ国に赴き、そこで4年間バラモンの術を学んだ。そして帰国・復位し、池の竜に呪いをかけた。竜は人に化し、王に謝罪した。そこで王は竜を葱嶺山に移した。そこは池から二千余里の距離にある*1
 また、波知国(パキスタンのイシュカルワルズ附近?)の池にも毒竜が棲みついていた。この竜は夏にはよく豪雨を降らせ、冬には雪を積もらせるなどの天変地異を起こしていた。そのため旅人はここを通るのに苦労した。雪は光を反射して旅人の目を照らすので、旅人は目を開けることもつらかった。しかし竜王を祭祀すればその後天候は回復するという*2
 また『法顕伝』には../雪山人という名の毒竜の話が載っている。

 対応する梵語はヴィシャナーガ(viṣanāga)だと推定されているが例証されていないようだ(『仏教漢梵大辞典』p.696)。エティエンヌ・ラモットは、『大智度論』のフランス語訳において「毒竜」をdragon venimeuxと訳しviṣanāgaと注記しているが、出典は不明*3

関連項目


参考資料 -


*1 資料/468:169, 178
*2 資料/468:182-184, 195
*3 資料/873:853

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Last-modified: 2013-09-15 (日) 04:42:08