ヨトゥン

Jǫtunn (orthographic)
Jotun, Jotan, Jötun, Jöten, Jötunn (broad transcriptions)
Jotunar, Jötnar (plural)

地域・文化:北欧


 巨人、怪物のこと。大きくフリームスルス(霜の巨人)とベルグリシ(山の巨人)に分かれる。

 サクソ・グラマティクスのデンマーク歴史書『デーン人の事績(ゲスタ・ダノールム)』(13世紀初頭)第1書第5章には、一見物語とは全く関係の内容に見えるサクソの「神族分類」がある。それによれば「魔術師(マテマティカ)」には3種類いて、1つ目は「巨人」であり、怪物のような人間であった。その身体はとてつもなく大きい(『事績』はラテン語で書かれているので、ここではヨトゥンではなくギガンテスと表記されている)。巨人と第2の魔術師たちは、ともに目の錯覚を引き起こすことが巧みであり、自分たちや他人の姿を自由に変えたり、自分の本当の姿を偽りの姿の下に隠すこともできた。
 第2の魔術師は「自然に働きかける術」つまり魔術を知る者たちで、予見の術を持っていた。彼らは体は小さいぶん頭の回転が速く、いつも巨人と世界の覇権を争っていた。そして最後には魔術師たちが巨人を武器によって打ち負かし、世界の支配権とともに、偽りの「神」という称号も手にした(サクソはキリスト教徒なので、北欧神話における神は「偽りの」ということになっている)。
 第3のものは巨人と魔術師の混合によって生じた種族であり、特に身体も大きくなければ魔術に優れているわけでもなかったが、依然としてその術によって人々を欺き、神と呼ばせた。
 『事績』の前半部分は、多くの類似点が見られることから、サクソが旧来から存在した北欧神話をデンマークの最古の歴史へと変換した物語だと考えられている。そしてこの「神族分類」も、ヴァン神族ニョルズの歴史化であるハディングスの物語が始まってすぐに挿入されているものである。
 この説に従えば、サクソの言う「巨人」はそのままヨトゥンたちであり、2つめと3つめが神々(アース神族とヴァン神族)であると考えられる。とはいえ、特に神々の区分はスノッリなどを通じて知られているものとはかなり異なっており、サクソ自身、その意味についてはあまり知らなかったのだと思われる。まず、「魔術師」は、魔術を駆使し(オージン神)、武器で巨人を退治する(ソール神)アース神族である。対して巨人と魔術師のハーフは、神話全体としても、印欧語族三機能論においてもアース神族より下の位階にあり、蔑まれる魔術セイズを編み出したヴァン神族であるということになる。

関連項目


参考資料 - 資料/151:; 資料/124; 資料/340:;


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Last-modified: 2010-06-28 (月) 05:49:03