パプストエーゼル†
Papstesel, Bapstesel
地域・文化:悪魔学
「教皇ロバ」。宗教改革の真っ只中である1532年に、ルターとメランヒトンが教皇を中心とした教会を攻撃するために作った小冊子に掲載された怪物のうちの一つ。もう一体はメンヒスカルブ(坊主子牛)。この小冊子は17世紀に至るまで英語やオランダ語やフランス語など様々な言語に翻訳されながら流布した。
メランヒトンによれば、パプストエーゼルは「ローマの反キリストの象徴」で、ロバの頭は愚かな教皇を、象のような右腕は現世の権力を、牛と鷲(グリフォン)の脚は精神と物質への服従を、女の胸と腹は欲望だらけの教会組織を、腰についている老人の顔は教皇政治の終わりを、ドラゴンの尾は教皇の勅書と免罪符を象徴するものであるとされた。この怪物の死体は1496年の洪水のさいローマのテーヴェレ河に打ち上げられており、これこそローマ教皇政治の終焉を意味するものだ、と彼は主張した。
ここまで寓意だらけだのパプストエーゼル、メランヒトン一派による創作の怪物だと考えられがちだが、実際のところは15世紀末に教皇アレクサンデル6世を攻撃するために創作された、反教皇勢力による産物だったらしい。メランヒトンやルターらはこの怪物の実在を信じて疑わず、将来の出来事の予兆としてこの怪物の出現を受け止めていた。これら2匹の怪物に限らず、当時は神が何か重大な出来事を予兆するために奇妙な動物をこの世界にもたらすことがあると考えられていた。
関連項目†
参考資料 - 資料/35:; 資料/109:; 資料/172: