イスクルジッキ†
Iskrzycki, Jskrzycki
地域・文化:ポーランド
ポーランド語としては「イスクジツキ」のほうが正確か。
ある貴族のところに男がやってきて、自分はイスクルジッキ(「火花、火打石」iskraあるいはiskri, iskrenny「隣人」)だと名乗る。「自分はあなたに仕えたいのです」。
そこで貴族の男は契約書を作って署名した。しかし、彼はそれが終わったところでイスクルジッキの足元が実は馬のひづめであることに気づいた。
人間ではないものと契約することはできない。貴族は契約を破棄しようと申し出た。
しかしイスクルジッキは、契約書にもう署名もあるのだから、私はあなたに仕える権利がある。
だから、いくらあなたが拒否しても、私は絶対に自分の義務を果たすのです!!と強弁した。
相手が人外のものとあってはしょうがない。
イスクルジッキはストーブのなかに見えない住居を作り、そこに住み込んだ。この召使は忠実に自分の役目をこなし、契約で課せられたすべての仕事をおこなった。人々はだんだんと馬足のイスクルジッキに慣れていった。
だが、主人の妻だけはだめだった。「得体の知れないものが家にいるのは気味悪いです。引越しをしましょう」。
そこで主人も城を出ることを決断し、べつの場所に領地を借りて、そこに一家で引っ越すことにした。馬車に乗って城を出発し、あと少しでその領地に着こうというところで、道がでこぼこのところにきてしまった。馬車がひっくりかえりそうになり、主人の妻は大声をあげた。すると、
「こわがりめさるな! イスクルジッキめがここに控えております!」(nie bój si, pani; Iskrzycki z wami)
という声が、馬車の後ろからした。
もはや自分たちは逃げるすべがないと悟った一家は、それから契約満了の日までこの妖精と仲良くくらしたとさ。
関連項目†
参考資料 - 資料/16:513; 資料/68: