地域・文化:世界各地
別名: ガンドゥルワ(Gaṇdərəβa)、ガンダラワ(Gaṇdaraβa)。
黄金のかかとの(yim zairi.pāšnəm「ヤシュト」5.38)、ウォルカシャ海に棲む強大な怪物。英雄クルサースパに退治された。しかし、その伝説の全貌は明らかではない。
ガンダルワは、『アヴェスター』のうちの何ヶ所かで、クルサースパと戦った怪物であることが断片的に記されている。たとえば「アーバーン・ヤシュト」では、クルサースパは多くの生贄を女神アルドウィー・スーラー・アナーヒターに捧げ、自分に「黄金のかかとの」ガンダルワを退治する恵みを与えよ、と願っている。ウォルカシャの海がすべて沸騰する、とあるから海と関係のある怪物であり、非常に巨大な存在であることがわかる。
また「ラーム・ヤシュト」 では、クルサースパは風神ワユに同様のことを嘆願している。ガンダルワは水の下にすむ存在であり、深きところのアフラの息子、深淵の唯一の支配者であるという。
「ファルワルディーン・ヤシュト」123節では、ガンダルワはパルシンタ(Parṣ̌iṇta)の父だということになっている(これはゾロアスター教徒の名前らしい)。ただしこの人のつづりはクリスティアン・バルトロメの辞典によるとgandrəwaである。
後世のパフラヴィー語文献『デーンカルド』、現在散逸している部分のアヴェスターの要約からは、いちおうアヴェスターそのものにもクルサースパの武勇伝が描かれていたことがわかるが、それは要約に過ぎない。『リヴァーヤト』には、より詳しい戦闘の物語が描かれているが、そこではガンダルブとなっている。
名前からみて、どう考えてもインドのガンダルヴァと関係があることは明らかなのだが、芸神群としてのガンダルヴァと海の怪物であるガンダルワは、今のところどう考えても結びつかない。