地域・文化:アッカド
「毒蛇」「誕生の女神の蛇」。
バシュムー(Bašmū)。
表意的にMUŠ.ŠÀ.TÙR, MUŠ.ŠÀ.TURと表記される。
角の生えた蛇。前脚がある。
シュメールでは、もともと角のある蛇はウシュム(ウシュムガル)とムシュシャトル2種に分かれていたが、アッカドに入るとバシュムとして一本化されるようになった。
創世叙事詩『エヌマ・エリシュ』ではマルドゥクの敵たる../ティアマトの11の怪物の1つに数えられるようになった。
標準バビロニア語の文書ではバシュムは戦闘神ティシュパクに倒された敵だったり下僕だったりしている。ある神話では、バシュムは海の中で創造され、魚、鳥、野生のろば、そして人間を貪り食ったという。神々は「蛇を誘惑するもの」ネルガルを地上に送り込み、この蛇を従えさせた。
ウシュムガルルとしてのバシュムはシュメール語のウシュムガルに由来し、時々、神ナブー、またはニヌルタのドラゴンたるムシュフシュと置き換えられることがあった。
図像としてのバシュムは新シュメール時代の印章に見られ(ニンギシュジダ神がラガシュの王グデアをエンキに紹介する場面が彫られている円筒印章では、ニンギシュジダの両肩からそれぞれ一匹ずつ2本の湾曲した角がついている蛇が生えている)、古アッカド時代の芸術にもそれらしいものが存在する。ほかの史料は第1千年紀のものである。また、エサルハッドンの宮殿にあるドラゴンが、もしかしたらバシュムかもしれないという。さらに、新アッシリアではバシュムがエジプトのウラエウスを意味していた可能性がある。