ダイモニオン・メセーンブリノン

Daimonion Mesēmbrinon
Δαιμόνιον Μεσημβρινόν

地域・文化:悪魔学、ギリシア語


 「白昼の悪魔」。
 旧約聖書の『詩篇』第91章第6節(セプトゥアギンタでは第90章)に「ケテヴQeteb」という言葉が出てくる。   第6節後半のヘブライ語原文は、ローマナイズするとQṬB YŚWD ṢHRYMになる。このうちQṬBは破壊の悪霊のことで(→ケテヴ)、全体としては「真昼に襲う病魔も」(新共同訳)という意味になるが、紀元前後は意味がよくわかっていなかった。  聖書をギリシア語に翻訳しようとしたセプトゥアギンタの学者たち、シュンマコス、アクィラらはここに頭を悩ませた。そこでYŚWDをWŚD「悪霊」というように原文を改変して、「破壊(ケテヴ)と白昼の悪霊」とした。その結果、『詩篇』のこの章に現れる悪魔的存在が一つ増えることになった。それがギリシア語になり、ダイモニオン・メセーンブリノンになったというわけである。

 そもそも中東の真昼は酷く暑く、おそらくケテヴもその暑さの擬人化でもあったのだろう。しかしながら、このようにして一人歩きするようになった「白昼の悪魔」は、初期教父時代以降、中東の真昼とはまったく違ったイメージをまとい、キリスト教悪魔学にとって重要な存在となる。
 そのあたりについてはこの語がラテン語化された[[>./]]

関連項目


参考資料 - 資料/1:1174; 資料/507


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