ミトティン†Mithotyn, Mitothin, Mithothyn
地域・文化:デンマーク サクソ・グラマティクスのデンマーク歴史書『デーン人の事績(ゲスタ・ダノールム)』(13世紀初頭)第一書第7章に登場する魔法使い。死後も害悪をまきちらした。 ハディングスが活躍していたころ、ビザンティンの王にオティヌス(北欧神話の神オージンに対応する)という人間がいた。彼は好んで北欧のウプサラに滞在し、ヨーロッパ中で自らを「神々の王」と呼ばせていた(サクソはキリスト教徒であったので、これを「偽りの」としている)。北国の王たちはオティヌスにさらなる敬意を表するため、金でこの「神」の像をつくり、ビザンティンに贈った。そして彼らは像の両腕に重い腕輪をつけた。 この物語については、古くから北欧神話におけるアース神族とヴァン神族の対立と融和のモティーフが歴史的な物語になったのだと言われてきた。その詳細は専門書に譲るとして、ではミトティンは何かというと、ジョルジュ・デュメジルの『神話から物語へ』によると、オティヌス=オージンのアース神族に対立するのだからヴァン神族であるということになる。神話では2つの神族は融和するが、『デーン人の事績』ではミトティンは完全に敗れる。さらに、神話(『ユングリンガ・サガ』、『詩語法』)ではクヴァーシルというヴァン側の神がアース神族に渡され、彼は世界中を回って人々に知恵を授けるが、2人の小人に殺されてしまう。その血は蜂蜜と混ぜられ、オージンの蜂蜜酒ミョズとなる。このクヴァーシルが、異国を彷徨っていて殺されるミトティンに対応すると言われる。クヴァーシルとミトティンの名前は似ていないが、デュメジルはミトティンの綴りがMith-ot(h)ynに分解できることを指摘した。上にあるように『デーン人の事績』ではオージンはオティヌス(Othinus, Othynus)と表記され、ときにオティン(Othin)となる。「オージンのミョズ」は「Óðinnのmjöðr」であり、それが「othinのmith」になったというのがデュメジルの説である。 関連項目†参考資料 - 資料/151: |