『アブラメリン』の魔神たち

Spirits in the book of the sacred magic of Abra-Melin the Mage

地域・文化:悪魔学


 『アブラメリンの書』は近世ヴォルムスで著述された魔術書(グリモア)である。
 本書の主張するところによれば、このグリモアは1458年にユダヤ人のアブラハムが息子のラメクに書き与えたものらしい。しかしながら、その成立時期は15~16世紀かそれ以降だと思われる(最古の写本は18世紀ごろ)。メインの魔術儀式はかなり隠遁主義的で自己鍛錬を必要とするものである(他のグリモアに比べて、実際に始めるまでの準備がやたらと長い上に地味)。細々とした病気を避ける術なども。
 このグリモアはマクレガー・メイザースがフランス語から英訳して有名になったが、フランス語写本は不完全で誤訳や脱落が多く、必ずしも正確に原典を伝えているわけではなかった(日本ではメイザース版からの重訳が出回っていた)。しかし1995年にはドイツ語写本(アブラメリンの原典はドイツ語で書かれていた)に基づいたテキストが出版され、現在はこのデーン版を英訳したものも流通している。
 本項は筆者がデーン版を入手する前に書かれたものなので、メイザース版の不正確さをそのまま継承してしまっているところがある。時間があり次第、デーン版をもとに悪魔たちの名称を正確に直す予定。

 このグリモアの(メイザース版の)第2書第19章は儀式によって召喚される魔神たちのリストである。
 まず、すべての霊を支配する4人の王はルキフェル、レヴィアタン、サタン、ベリアル。
 そして、その下に副王(Unterfürst)8人が控える。アスタロト、マゴト、アスモデー、ベルゼブド、オリエンス、パイモン、アリトン、アマイモン。
 さらに、それぞれ個別の、または複数の大魔神たちに属する精霊たちの名前(だけ)が大量にリストアップされている。
 メイザースはそれぞれの名前について詳細な語源推測をしているが、それによれば語源はヘブライ語、ギリシア語、ラテン語はもとよりコプト語、カルデア語(新バビロニア語)にまで広がっているという。しかし、この事典ではメイザースの語学的知識はともかくとして1世紀前の古代西アジア言語学は現代から見るとかなり不備なところが多く、多くを省略した。またゲオルク・デーンによるとフランス語写本には脱落や誤字脱字があるため、今や彼による語源解釈にどこまで意味があるかも疑問である。

 第19章にある精霊たちの名前の数は次のようになる。

オリエンス、パイモン、アリトン、アマイモンに共通のもの111
アスタロト、アスモデー53
アマイモン、アリトン10
アスモデウス、マゴト15
アスタロト32
マゴトとコレ65
アスモデー16
ベルゼブド49
オリエンス8
パイモン15
アリトン22
アマイモン20

 以上、416。名前がかぶるのは1組で、実質的には415。

関連項目


参考資料 -


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