レヴィアタン†
Leviathan
לִוְיָתָן, Λευιαθαν
地域・文化:ユダヤキリスト教
リウヤーサーン、リヴヤタン(Liwyāṯān)。
英語ではリヴァイアサンと呼ばれる。キリスト教圏で最も有名な怪物。
旧約聖書『ヨブ記』では、神が自らの偉大さを説明するために、第41章をすべてレヴィアタンに割いている。
まず、神はレヴィアタンを人間が捕獲できるか、挑発できるか、殺せるか、といい、そしてすべてを否定する。この捕らえ方が鰐に似ているためレヴィアタンが鰐だという12節から、「わたしはこれが全身と、その著しい力と、その美しい構造について黙っていることはできない」と、レヴィアタンの容姿を説明し始める。
それによると、レヴィアタンは二重の鱗を持ち、鋭い歯をはやし、その背は盾の列でできており、鱗は互いに密接している。そして、鱗は堅くて剥がすことはできない。
さらに、レヴィアタンがくしゃみをすれば光を発し、その目はあけぼののよう、その口からは炎が吹き出ている。鼻の穴からは煙が出てきて、その息は炭火をおこす。その首には力が宿っており、心臓は石臼のように堅く、つるぎも槍も矢も、銛も、功を奏さない。
鉄を藁のように見なし、青銅を朽ちた木と見す。スリングの石も、レヴィアタンの前には藁くずのように無意味だ。
その腹は淵を鼎のように沸き上がらせ、海を香油の鍋のようにする。レヴィアタンが歩いた後には、光る道が残る。神は地上にこれ以上の生物を作らなかった。
旧約聖書以降†
しばらく後の『エチオピア語エノク書』60:7-9(マカバイ戦争前[前167以前])では、終末の日に、大洋に棲む雌の怪物レヴィアタンと、雄の怪物ベヘモトが切り分けられる、と述べられている*1。また『シリア語バルク黙示録』29:4(後100年ごろ)でも、その時に(神が第五日目に創造した)ベヘモトとレヴィアタンが現われ、生き残った人々のための食料に供される、と書かれている*2。
さらに、『エズラ記(ラテン語)』6:49-52(後100年ごろ)にもベヘモトとレヴィアタンが第五日目に創造されたとある。新共同訳から該当文を引用する。「それからあなたは、二つの生き物をえり分けられ、その一つをベヘモット、もう一つをレビヤタンと名付けられました。そしてあなたは、両者を互いに引き離されました。水が集まっている第七の部分に両者を置くことができなかったからです。そしてベヘモットには三日目に乾いた土地の一部を与え、そこに住むようにされました。そこは一千の山のある土地でした。レビヤタンには水のある第七の部分をお与えになりました。あなたはこの二つを保存し、あなたのお望みのとき、お望みの人々に食べさせるようにされました」*3。
中世以降†
悪魔学では嫉妬を司る魔神といわれるようになった。また、クラーケンと混同されることもある。
欽定訳聖書(1611)の『ヨブ記』第41章第1節につけられた脚注では「クジラあるいは渦巻」とされている。しかし1663年にロンドンで出版されたサミュエル・ボシャールの『聖動物誌』第5巻第16章ではあっさり「レヴィアタンという名称はクジラではなくワニ(Crocodilum)を意味する」と否定されている。さらに1667年のジョン・ミルトン『失楽園』では、レヴィアタン(英語読みだとリヴァイアサン)は神話的な巨獣とされている。
ウガリト神話に登場する竜リタンがレヴィアタンと同根の怪物であると考えられている。
歴史言語学的にはレヴィアタン(リウヤーサーン)のほうが古いらしく、J・A・エマートンは*liwyatānu>*līyitānu>*lītānuと変化したという説を唱えている*4。
関連項目†
参考資料 - 資料/356; 資料/85: