ティアマト

Tiʔāmat

地域・文化:アッカド


 ティアーマト。
 別名: タワワト、フブル、ティワワト、タムト、タムテ(シリアのダマスキオスの資料による)、タウテ(ベロッソスの資料による)。
 語源はティアムトゥム(tiamtum,「海」)。塩水の象徴である原初の女神。「淡水」の神アプスーと対であるが、たびたび「一緒になって混ざっていた」という。

 バビロニアの創世叙事詩『エヌマ・エリシュ(Enūma Eliš)』(イシン第二王朝(前12世紀)以降成立)によれば、まだ何も創造されいなかったとき、世界にはアプスーとムンムとティアマトだけがいた。
 これらの混交からラㇵムとラハムが生まれ、次にアンシャルとキシャルが生まれ、そしてアンシャルからアヌが生まれた。アヌはエアをもうけ、そしてその他の神々も誕生した。しかしこれら若い神々は非常に騒がしく、祖父母に当たるティアマトとアプスーを日々悩ませていた。
 ある日(そもそも日付があったかどうか微妙なところだけど)、アプスーは召使のムンムに相談し、騒がしい自らの子孫たちを滅ぼすことを決めた。ティアマトはかわいい孫たちを殺すことに反対したが、アプスーとムンムの決意は変わらなかった。しかしこの計画を察知した知恵の神エアは結界を作ってほかの神々を守り、呪文でもってアプスーを眠らせた。眠ってしまったアプスーはもはやエアの敵ではなく、彼はこの淡水の神を軽々と殺してしまった。
 エアは自分の部屋をアプスーの上に作り、そこで妻ダムキナとの間にマルドゥクをもうけた(ダイメル版ではアッシュール)。子供ができたエアは大いに喜び、マルドゥクに他の神々の二倍の神性を与えた。彼の目は2つではなく4つ、耳は2つではなく4つである、というように。マルドゥクはアヌから4つの風を与えられ、それで遊んでいたが、やはり非常に騒がしく、今度もまたティアマトをいらだたせてしまった。かわいい孫たちとはいえ夫を殺された恨みがありさすがにこれ以上我慢が出来なくなったティアマトは、恐れを知らない11の怪物を生みだし、彼らに神性を与えた。そして息子にして二番目の夫であるキングに対しては天命のタブレットを与え、この軍隊の総司令官としたのである。
 ティアマトの動向はエアに伝わり、エアやアンシャルは対応に苦慮する。ティアマトはどの神々よりも力が強く、「ティアマトに手向かっても生きて帰れそうもない」とアンシャルは言う。しかたなく、彼はマルドゥクに戦闘を命じることを決定した。マルドゥクは喜んで戦うことを引き受け、かわりにすべての神々よりも地位を高くすることを神々に約束させた。
 マルドゥクはアヌからもらった4つの風に加えて多くの悪風を従え、嵐の車に乗り、さまざまな武器で武装し、ティアマトの軍隊と対峙した。マルドゥクはキングを睨み、彼の歩みをもつれさせた。マルドゥクの恐ろしさに、他にティアマトのもとに参上していた多くの神々もひるんでしまった。弱小の神々が退き、マルドゥクとティアマトは直接対決する。ティアマトは彼のほうを見向きもせず呪文を投げつけ、マルドゥクら神々を侮辱した。マルドゥクはその侮辱に対しティアマトを言葉で挑発した。「さあ、かかってこい」
 ティアマトはその言葉を聞くと我を忘れて、マルドゥクを呪って彼へと突進してきた。マルドゥクはティアマトに網をかけ、風を送り込んだ。ティアマトはその風を飲み込もうとしたが飲み込みきれず、そのまま口が開いた状態になってしまった。彼は口の中に向かって矢を放ち、その矢はティアマトの内臓を引き裂き、心臓を射抜き、この原初の女神を殺した。
 ティアマトに従っていた神々は網で捕らえられ、怪物たちは縛り上げられ、マルドゥクの足元に踏みつけられた。
 マルドゥクはティアマトの死体を眺めていたが、しばらくしてそれから天地を作り出すことを思いついた。彼女の体の半分は天になり、彼女の体内の水が雨として地上に降り注ぐようになった。残りの半分は大地となった。ティアマトの頭の上には山が創られ、両眼からはティグリス・ユーフラテス川が流れるようになった。乳房はとくに立派な山となり、そこに大きな泉が空けられた。尻尾は天の「最高の結び目」につなげられ、太ももは天を固定した。

 ティアマトは原初の水の女神であり、よく「ドラゴンだ」とされることがあるが、これまでにティアマトが実際に蛇に似た姿をしているとある文書や美術が見つかったことはない。参考: ティアマトはドラゴンか
 新年祭や新バビロニア時代の注釈によれば、ティアマトには尾に加えて角も複数生えているらしい。
 また、デネブカイトスがあるくじら座の怪物がティアマトだとされることもあるが、当然何の根拠もないはず。あれに固有名詞はなく、ケトス(Ketos。鯨のことだが、怪物的に想像された)と呼ばれている。

関連項目


参考資料 - 資料/91; 資料/271:; 資料/350:


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Last-modified: 2010-06-28 (月) 05:59:57 (3811d)